毎日普通に生活しているだけなのに、特に食べ過ぎたわけでもないのに、気づかないうちに体重が増えてしまっている——そんな経験はありませんか。加齢による基礎代謝の低下や運動不足など、生活習慣が積み重なって、少しずつ体重が増えていくのです。
このような生活習慣が影響している肥満を改善するには、食事療法と運動療法を組み合わせ、バランスを調整しながら進めるダイエットが望ましいといえます。
そして運動療法の中心となるのが、脂肪を燃やす有酸素運動(エアロビクス)です。この記事では、健康改善に有酸素運動が望ましい理由と、運動が苦手な方・肥満の方でも無理なく始められる順序について解説します。
巷には様々なダイエット方法があふれていますが、体重計(ヘルスメーター)の数字だけを追い求めると、間違ったダイエットになってしまいます。とくに、1日3食のうち1食を特別な食品に置き換える「置き換えダイエット」には、ビスケットタイプや雑炊タイプ、あるいはフルーツを1個だけ、など様々なものがあります。
これらを実際に試すと、確かにダイエット期間中は体重が減ります。しかし、その後ふつうの食事に戻すと、体重は元に戻ってしまいがちです。これはダイエットに成功したのではなく、一時的に「やつれた」状態にすぎません。極端な食事制限は筋肉も落として基礎代謝を下げるため、かえってリバウンドしやすい体をつくってしまいます。バランスの良い食事をとりながら、その状態で体重が減って(そして維持できて)こそ、本当のダイエット成功といえるのです。
健康的に体重を減らすには、体の脂肪を効果的に燃焼させる必要があります。そのためには、ウエイトトレーニング(筋トレ)で筋肉量を維持・増加させ、基礎代謝の土台を保つことが役立ちます。ただし、筋トレだけで効率よく痩せられるわけではありません。効率よくダイエットするには、食事の摂り方を改善しつつ、有酸素運動を運動に組み入れることが大切です。筋トレ(無酸素運動)と有酸素運動、そして食事管理の3つを組み合わせるのが王道です。
有酸素運動の代表格といえば、まずウォーキングやランニングが挙げられます。しかし、一念発起してウォーキングやランニングを始めたところ、腰や膝を痛めてしまうことがしばしばあります。なぜでしょうか。それは、これまで運動していなかった方が、急に運動を始めるからです(自分が思っている以上に筋力が低下していることが多いのです)。
ちなみに、ウォーキングでは膝に体重の約2〜3倍、ジョギングでは着地時に体重の約4〜5倍もの負荷がかかるといわれています。体重が重いほど、関節にかかる負担も大きくなります。そのため、とくに肥満の方が、いきなりウォーキングやジョギングを始めるのは、膝や腰を痛めるリスクが高く危険ともいえます。
そこで、有酸素運動の導入段階としておすすめなのが、プールでのエクササイズ(水中運動)です。泳げなくても、プールの中を歩くだけで、水の抵抗によって十分な運動になります。水は空気の約800倍も密度が高いため、ゆっくりした動きでも自然に筋肉が使われ、カロリー消費にもつながります。そして何より、水中では浮力が働くため、腰や膝に負担をかけずに運動できるのが最大の利点です。肩まで浸かると体重は約10分の1に感じられるともいわれ、関節に痛みのある方や体力に自信のない方でも安心して取り組めます。実際、アメリカスポーツ医学会(ACSM)も、肥満のある人には水中運動を推奨しています。
運動の望ましい順序としては、まず水中ウォーキングで体重を落とし、あわせてウエイトトレーニングで膝周り・腰周りの筋肉を鍛えて、ウォーキングやジョギングに耐えられる体をつくります。その後、ある程度体力に自信がついたらウォーキングに移行し、さらにジョギングへと段階的に進めていくのが理想です。(参考として、体重が標準体重を大きく上回る方は、とくにこの「水中運動から始める」順序が安全です。なお標準体重は、かつて使われた「(身長cm-100)×0.9」という計算式もありますが、現在はBMIに基づく「身長m×身長m×22」が標準とされています。例えば身長170cmなら 1.7×1.7×22 ≒ 約64kg が目安です。)
十分に基礎体力がついた後も、ずっと水泳や水中ウォーキングだけを続ける方も多いですが、私たちは陸上で生活する生き物です。骨を丈夫に保つには適度な重力刺激も必要なので、最終的には陸上で行う運動へ移行していくのが望ましいでしょう。もちろん、膝などに持病がある方は、無理に陸上運動へ移らず水中運動を継続するなど、自分の体に合わせて選ぶことが大切です。
初めてウォーキングを始めるなら、体が軽く汗ばむ程度から始め、5分・10分といった細切れの時間を上手に活用しましょう。最初は「少し物足りないかな」という程度でやめておくのがポイントです。物足りなさが、長く続けるコツになります。
ランニングについても、ウォーキングと交互に行いながら、少しずつランニングの割合を増やしていくとよいでしょう。いずれにしても、運動の強度と量を同時に上げるのは体への負担が大きく、ケガのリスクが高まるので避けた方が無難です。「今日は時間を少し延ばす」「今日は少しペースを上げる」というように、片方ずつ慎重に進めましょう。なお、有酸素運動で脂肪燃焼や健康効果を狙うなら、1回20〜30分以上を週3回程度が一つの目安とされています。最初は短時間でも、習慣にして継続することが何よりも大切です。持病のある方や体調に不安のある方は、運動を始める前に医師に相談すると安心です。
健康的なダイエットには、食事改善・筋トレ・有酸素運動(エアロビクス)の組み合わせが望ましく、置き換えダイエットは一時的にやつれるだけでリバウンドしやすいので注意。運動経験のない方や肥満の方は、いきなり走ると膝(体重の4〜5倍の負荷)を痛めやすいため、まず浮力で関節にやさしい水中ウォーキングから。筋力をつけてからウォーキング→ジョギングへ段階的に進め、強度と量は同時に上げず、無理なく継続しましょう。
※本記事は一般的な健康・運動情報です。持病のある方、関節に痛みのある方、肥満の程度が大きい方は、運動を始める前に医師にご相談ください。