膝関節周辺の痛みというと、若年層というより中高年層の悩みというイメージがあるかもしれません。事実、40〜50歳を超えると『変形性膝関節症(へんけいせいしつかんせつしょう)』と呼ばれる膝関節の痛みを発症する方が多くなります。変形性膝関節症とは何かしらの原因で文字通り、膝関節が変形してしまった傷病のことです。一般的に変形性膝関節症は男性より女性の方に多くみられます。(女性ホルモンの関係)
その他にも膝関節の痛みの原因になるものとして、『リウマチ』『痛風』『事故による外傷』などが考えられます。
ときにこれらが原因で『変形性膝関節症』を誘発してしまうこともあります。
しかし、膝の痛みは中高年だけのものではありません。実は若い世代にも膝の痛みに悩む人は多く、その原因の多くはスポーツにあります。この記事では、「若年層の膝の痛みの原因は本当にスポーツが多いのか?」という疑問に答えながら、若い世代に多い膝のトラブルの症状・原因・対処法を、整形外科の情報をもとに解説します。
若年層に見られる膝関節の痛み|原因の多くはスポーツ
若年層でも膝関節の痛みに悩まされている方は多いようです。しかし、上記で紹介したような中高年齢の方に多く見られるような傷病によるものではなく、別の原因で膝関節を痛めてしまっているのです。その大半が、スポーツによる膝の「使いすぎ(オーバーユース)」や、繰り返しの負荷による障害です。以下、若年層に多く見られる膝関節のトラブルと、その症状を見ていきましょう。
- 膝蓋大腿関節症
- 膝蓋骨不安定症
- 膝蓋軟骨軟化症
- オスグッド・シュラッター病
- ジャンパーズニー(ジャンパー膝)
- 膝蓋大腿関節症(しつがいだいたいかんせつしょう)
膝蓋大腿関節症は関節を構成する骨の軟骨がすり減ることで、それによって生じたカスや骨のかけらが周囲の組織を刺激し、炎症が起きてしまった疾患のことを言います。ときにはその部分の骨が棘(トゲ)のようになってしまい(骨棘(こっきょく)と言います)、そのことで更にその周囲の組織を傷つけるようになります。膝蓋大腿関節症は加齢により生じることが多いのですが、若年層であっても膝関節を酷使しすぎれば膝蓋大腿関節症が生じてしまうことがあります。主な症状は、膝のお皿まわりの痛みや、階段の上り下り・しゃがみ込みでの違和感です。 - 膝蓋骨不安定症(しつがいこつふあんていしょう)
膝蓋骨不安定症は、何かしらの原因により膝蓋骨(お皿)が不安定な状態になってしまった状態のことを言います。原因の多くは大腿四頭筋のうち、内側広筋、外側広筋の筋力バランスが崩れてしまうことで発症するケースが多いようです。一般に膝が外側に引っ張られることが多いので、日常生活や運動のちょっとした動作で膝蓋骨が外側に脱臼してしまうことがあります。これを『膝蓋骨脱臼(しつがいこつだっきゅう)』と言います。一度、脱臼が起こると不安定性が増すので些細なことでも膝蓋骨が外れるようになります。このように日常的に脱臼をくりかえす症状を『反復性膝蓋骨脱臼』と言います。膝がガクッと外れる感覚(不安感)や、お皿が外側にずれる感じが代表的な症状です。 - 膝蓋軟骨軟化症(しつがいなんこつなんかしょう)
膝蓋骨は大腿四頭筋腱に付着し、膝蓋靭帯を介して脛骨粗面に付着します。大腿部の前面の筋肉、大腿四頭筋(大腿直筋、内側広筋、外側広筋、中間広筋の総称)が収縮すると、膝蓋骨を通じて膝蓋腱が引っ張られるので、結果的に膝関節を伸展させることができます。この膝蓋骨の裏側には膝蓋軟骨(しつがいなんこつ)と呼ばれる軟骨組織があるのですが、この軟骨が存在することで滑らかに膝蓋骨を動かすことができるのです。しかし、膝を深く曲げる動作を繰り返し行いすぎると膝蓋軟骨自体に強い圧迫が生じ、それにより膝蓋軟骨が磨耗してしまい、膝を滑らかに動かすどころか、膝を僅かに曲げただけでも膝が痛むようになります。これが膝蓋軟骨軟化症と呼ばれる症状です。階段の昇降や長時間の座位の後に痛みが出やすく、思春期の女性に多いとされます。 - オスグッド・シュラッター病
オスグッド・シュラッター病は膝蓋腱の脛骨付着部での骨端症(骨端病)のひとつで、発育期の10〜15歳頃、特にスポーツをする男子に多く発病します。大腿部前面にある巨大な筋肉、大腿四頭筋の腱(大腿四頭筋腱)は膝蓋骨(いわゆる膝のお皿と呼ばれるところ)に付着し、膝蓋靭帯を経由して脛骨粗面(けいこつそめん:膝蓋靱帯がついているすねの上半部)につながります。発育期の頃は脛骨粗面の成長軟骨が牽引力に弱いため、ジャンプやダッシュ、ボールを蹴る動作などで大腿四頭筋の牽引力が繰り返し加わると、成長軟骨帯の一部が炎症や剥離を起こし、痛みが生じるようになります。主な症状は、膝のお皿の下の骨の出っ張り(脛骨粗面)の痛み・腫れ・熱感で、進行すると出っ張りが目立つようになります。運動時に痛み、休むと和らぐのが特徴で、安静時には痛まないことが多いものの、重症化すると安静時にも痛むようになります。大腿四頭筋の柔軟性が低いほど発症・再発しやすいとされ、多くは成長期が終わると軽快します。 - ジャンパーズニー(ジャンパー膝)
ジャンパーズニーはその名称からもお解りいただけると思いますが、バレーボールやバスケットボールなど、ジャンプを繰り返すスポーツで多くみられる障害です。日々、ジャンプをして着地するということを繰り返し行うことで膝蓋腱に引き伸ばされる負荷が加わり、腱がわずかに損傷して炎症を起こし、『膝蓋骨(しつがいこつ)』周辺に強い痛みが出るようになります。膝蓋骨の上に痛みがある場合は『大腿四頭筋腱付着部炎(だいたいしとうきんけんふちゃくぶえん)』と呼ばれ、膝蓋骨の下に痛みがある場合は膝蓋腱炎(しつがいけんえん)と呼ばれます。何れにせよジャンパーズニーは膝蓋骨の上下に痛みを感じ、圧痛、腫れなどの炎症の症状が現れます。進行すると、踏ん張りが効かない・しゃがめない・全力で走れないなど、競技パフォーマンスの低下につながります。
このように若年層に見られる膝のトラブルの多くはスポーツなどで膝を酷使し発症するケースが多いようです。部活や大会に向けて熱心に活動するあまり、知らず知らずのうちにオーバーワークになってしまったという方は実に多く見られます。多少、膝の痛みがあるくらいでは休めないといった状況を作り出しているのがそれらの症状を生み出す土俵になっているのかもしれません。特に成長期の子どもは骨が急速に伸びる一方で筋肉や腱の成長が追いつかず、筋肉が硬くなりやすいため、膝への牽引ストレスが高まりやすいのです。このために痛めている本人よりも周りの先生や指導者、保護者が配慮する必要があると思います。
膝関節を痛めてしまったらまずは安静にすること
膝関節を痛めてしまったら、まずは安静にし、腫脹があるようなら患部を冷やすことが何よりも大切になります。(この際、患部を心臓より高く上げるのも有効です)応急処置としては、安静(Rest)・冷却(Icing)・圧迫(Compression)・挙上(Elevation)の頭文字をとった「RICE処置」が基本とされています。場合によってはテーピングなどで痛めている箇所を補強することも必要です。そして、痛みや腫れが続く場合は早急に整形外科を受診するようにしてください。自己判断で運動を続けると、剥離骨折など症状を悪化させることもあります。
このようなことにならないためにも日頃から運動前のウォーミングアップを欠かさず行うようにしましょう。また、運動後には柔軟性を向上させるためのスタティックストレッチも欠かさず入念に行うことも大切になります。特に大腿四頭筋の柔軟性を高めることは、膝のトラブル、とりわけオスグッド病やジャンパー膝を避けるためにも必ずやらなければならない部位と言えます。完全に膝のトラブルを防ぐのは難しくても、これらを日頃意識して行うことでかなりの確率で回避することができるはずです。特にサッカーやラグビー、アメフトといった、人と人とが激しくぶつかりあうコンタクトスポーツを行なっている方は日頃からより気をつける必要があります。
まとめ
若年層の膝の痛みは、その原因の多くがスポーツによる使いすぎ(オーバーユース)です。オスグッド病やジャンパー膝、膝蓋軟骨軟化症などは、いずれも膝のお皿まわりの痛み・腫れといった症状が特徴で、成長期や繰り返しの負荷が背景にあります。痛みや腫れが出たらまずは安静と冷却(RICE処置)を行い、続くようなら早めに整形外科へ。日頃の大腿四頭筋ストレッチが予防の鍵です。
参考文献・出典