安全性に問題のある筋力トレーニングとは?腰を痛めない選び方

腰痛があるためトレーナーに「腹筋を鍛えた方が良い」とアドバイスされたから、あるいは「お腹の出っ張りが気になってきた」から——そんな理由で腹筋運動を始めたところ、かえって腰を痛めてしまった、という経験をお持ちの方は多いのではないでしょうか。

腰を痛めてしまう理由の多くは、『①実施方法(フォーム)そのものが間違っていた』、『②運動方法が自分に合っていなかった』のいずれかです。

① 実施方法(フォーム)そのものが間違っていた場合
フォームが間違っていた方は、すぐに正しいフォームを習得し直す必要があります。最初はトレーナーから正しいやり方を教わったとしても、日が経つにつれ、自分にとって「楽なフォーム」へ少しずつ崩れていってしまうことはよくあります。誤ったフォームのまま続けると、運動効果が得られないばかりか、やがて腰を痛めることにもなりかねません。これは腹筋運動に限らず、すべての運動に当てはまります。こうした事態を避けるためにも、定期的にプロのトレーナーにフォームをチェックしてもらうことはとても重要です。

② 運動方法が自分に合っていなかった場合
自分に合わない運動で痛めてしまった方は、運動の前に、まず自分の腹筋の筋力レベルや身体的な特徴(姿勢)を知っておく必要があります。同じ腰痛でも、体のゆがみ方や特徴によって、腹部を鍛えた方がよいのか、腰部を鍛えた方がよいのか、あるいは筋力アップよりストレッチを重視した方がよいのか、と処方は人それぞれ異なるからです。また、身体的な特徴によっては「やってはいけない腹筋運動」もあるため、エクササイズの選び方がとても重要になります。

何はともあれ、まずは自分の腹筋の筋力レベルを正確に把握しましょう。腹筋の筋力チェックは、以下の手順で行います。

腹筋の筋力チェック

【腹筋の筋力チェック】

  1. 仰向けに寝ます。このとき、腰と床の間になるべく隙間が空かないようにします。
  2. 両膝を伸ばしたまま、足を床から約30cm浮かせます。
  3. 脚を浮かせた姿勢を保ちます。

テスト中は、腰の部分に隙間を作らず(腰を反らせず)、肩は床につけたまま維持します。両足を上げた状態が10秒程度しかキープできないなら、腹筋の筋力はかなり低下しているといえます。20〜30秒キープできれば、腹筋の筋力は申し分ありません。

10秒もキープできない方は、腰が反り返ってしまっている方に多く見られます。腰が過度に反っている状態を「反り腰」といい、腰椎前弯症(ようついぜんわんしょう)の方に多くみられます。ここで、腰椎前弯症について少し解説します。腰椎前弯症は「反り腰」とも呼ばれ、腰椎が過度に伸展(反った)状態をいいます。立っているときはもちろん、寝ているときでさえ腰が痛くなることが多いようです。もともと腰椎は「前弯」といって少し前向きのカーブがあるものですが、それが強すぎるのは良くありません(もちろん、無さすぎてもいけません)。この状態が長く続くと、やがて体に様々な悪影響を及ぼすようになります。

なぜ、腰が反ってしまうのか?

腰が反ってしまう理由は、実に様々です。代表的なのは、股関節を曲げる筋肉である腸腰筋や大腿直筋が硬くなりすぎて、骨盤が前傾してしまうケースです。骨盤が前に傾くと、その上に連なる腰椎が引っ張られて過剰に反るようになります。デスクワークなどで長時間座っていると、これらの筋肉は硬くなりがちです。

また、腸腰筋・大腿直筋と反対の働きをする、お尻(臀部)や太もも裏(ハムストリングス)の筋力が弱くなっても、腰椎の前弯は強くなります。もちろん、体幹の筋力バランスが崩れても同じことが起こります。例えば、体幹を丸める代表的な筋肉である腹直筋の筋力が低下したら、どうでしょうか(さらに腰部の柔軟性も低下していたら?)。やはり、腰椎の前弯が強くなってしまいます。

つまり反り腰の改善には、硬くなった腸腰筋・大腿直筋を「ストレッチ」し、弱くなった腹筋・臀筋を「強化」する、という両面のアプローチが必要です。腰椎前弯症の方が、前弯を改善しようと腹筋群を鍛えようとするところまでは良いのですが、ここでトレーニング種目の選択を間違えると、かえって腰を痛めてしまうことがあります。

腰を痛めてしまう腹筋運動?

腹筋を鍛える目的でよく用いられる種目に、ストレートレッグレイズ(レッグリフト)があります。しかし、この種目を「腹筋を鍛える種目」と勘違いしている方が多いのですが、実はこれは主に股関節屈筋群(腸腰筋・大腿直筋など)を鍛える種目であって、腹直筋などの腹筋群を主に鍛える種目ではありません。もちろん腹筋群がまったく使われないわけではありませんが、この種目では腹筋群は補助的な役割しか果たさないのです。

(写真1)ファーストポジション

(写真2)セカンドポジション
  1. ストレートレッグレイズのやり方は、まず仰向けになって両足を伸ばし、両足の上げ下げを行います。
  2. 運動中は、なるべく腰と床の間に隙間をつくらない(腰を反らせない)ように心がける必要があります。

この種目の動作を分析すると、主な運動は「股関節の屈曲」です。股関節の屈曲に関与するのは腸腰筋・大腿直筋などで、これらの筋肉がこの運動の主役として能動的に活動します。一方、腹筋群はというと、運動中に腰が反らないよう、等尺性収縮(長さを変えずに力を出し続ける働き)で姿勢を支えています。つまり、腹筋群もまったく使っていないわけではありませんが、その活動は「静的」であって「動的」ではないのです。

ここが重要なポイントです。先の腹筋筋力テストで10秒未満しか保持できなかった方(腹筋が弱い方)がストレートレッグレイズを行うと、脚の重みを腹筋で支えきれず、腰椎が過剰に反ってしまって、かえって腰を痛めてしまいます。とくに脚を下ろしていく局面で腰が反りやすく、腰椎に大きな負担がかかります。したがって、この種目は行うべきではありません。

結論として、ストレートレッグレイズは、腹筋群が弱い方、および腰椎前弯症(反り腰)の方は行うべきではないのです。ACSM(アメリカスポーツ医学会)も、ストレートレッグレイズはシットアップと同様に腰部へ負担がかかりやすい種目として、注意を促しています。腹筋が弱い方は、まず腰を反らさずにできる種目(膝を立てたクランチや、へそをのぞき込む小さな動き、ドローインなど)から始め、筋力がついてから負荷を上げていくのが安全です。

このように、よく目にする運動の中にも、安全性やその効果に疑問のあるものが少なくありません。また、同じ種目でも、個々の姿勢や筋力・運動能力の違いによって、本来は避けるべき場合があるということを理解しておきましょう。「みんながやっているから」「定番だから」と安易に選ぶのではなく、自分の体に合った種目を、正しいフォームで行うことが、ケガを防ぎ効果を上げる何よりの近道です。不安がある方は、整形外科や専門のトレーナーに相談することをおすすめします。

まとめ

腹筋運動で腰を痛める原因は、フォームの誤りと「自分に合わない種目選び」の2つ。まず腹筋の筋力をチェックし(両脚を上げて何秒保てるか)、自分の姿勢タイプを知ることが大切です。とくにストレートレッグレイズは、主に股関節屈筋を使う種目で、腹筋が弱い方や反り腰(腰椎前弯症)の方が行うと腰を痛めやすいため避けるべきです。定番種目でも体に合わないことがあるので、正しいフォームと種目選びを専門家に相談しましょう。

参考文献・出典

※本記事は一般的な健康・運動情報です。腰痛などの持病がある方、痛みがある方は、運動を始める前に整形外科や専門のトレーナーにご相談ください。

編集長