普段、私たちが何気なく行っているストレッチの中には、安全性に問題があるものや、効果が疑わしいものがあります。太もも前面の筋肉を伸ばす目的で、下の写真のようなストレッチ(立って足首をつかみ、かかとをお尻に近づける方法)を行ったことのある方も多いのではないでしょうか。
お勧めできないストレッチ
これは、太もも前面の筋肉=大腿四頭筋(だいたいしとうきん)を主に伸ばす目的で、よく使われてきたストレッチです。しかし、このストレッチは、人によっては腰を激しく痛めてしまうことがあります。
それでは、どのような方が、このストレッチで腰を痛めてしまうのでしょうか。
腰椎前弯症
図のように腰が著しく反ってしまった不良姿勢を『腰椎前弯症(ようついぜんわんしょう)』、いわゆる「反り腰」といいます。比較的、女性に多く見られる不良姿勢の一つです。腰椎が過剰に反った状態なので、立っているときはもちろん、睡眠時(とくに仰向け)でさえ、腰に負担がかかり続けてしまいます。
反り腰の方は、腰椎の後ろ側にある椎間板の後部が圧迫されやすく、椎間板に問題(椎間板ヘルニアなど)が生じやすい状態になっています。また、背骨の後ろにある棘突起(きょくとっき)付近に負担が集中し、疲労骨折のような状態(腰椎分離症)を起こすことがあります。これをきっかけに背骨の安定性が保てなくなり、椎体が前方へずれる『腰椎すべり症』や、神経の通り道が狭くなる『脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)』につながることもあります。
では、なぜ反り腰になるのでしょうか。反り腰の方は、太もも前面の大腿直筋(だいたいちょっきん=大腿四頭筋の一つ)や、股関節の前にある腸腰筋(ちょうようきん)といった、股関節を曲げる(屈曲させる)筋肉が、極度に硬くなっていることが多いのです。これらの筋肉が硬いと、骨盤が前に傾き(前傾し)、それに引っ張られて腰椎の反りが強くなります。だからこそ、太もも前面のストレッチが必要なのですが——ここに落とし穴があります。
反り腰タイプの方が、先に紹介した「立って行う大腿四頭筋ストレッチ」を行うと、太もも前面を伸ばそうとする動きが骨盤の前傾・腰の反りをさらに強め、腰椎が過度に反って(引っ張られて)しまい、腰を痛めるリスクが大きく高まってしまうのです。よかれと思ったストレッチが、逆効果になりかねません。
それでは、腰に負担をかけずに、安全に太もも前面を伸ばすには、どうすればよいのでしょうか。
大腿部前面の安全なストレッチ
当サイトでは、腰椎に比較的ストレスがかかりにくい方法として、上の写真のようなうつ伏せで行う大腿四頭筋ストレッチをおすすめします。腰が反りにくい姿勢なので、立位より安全に太もも前面を伸ばすことができます。
▪️ 実施方法
ポイントは、「腰を反らさないこと」と「膝に痛みが出ない範囲で行うこと」です。膝の下にタオルやマットを敷くと、膝への負担を和らげられます。このうつ伏せの方法でも、腰を反らすと痛む方や、ヘルニア・すべり症・分離症などのある方は、無理をせず慎重に。痛みが出る場合は中止してください。横向きに寝て同じように足の甲をつかむ方法(横向きの大腿四頭筋ストレッチ)も、腰に負担がかかりにくくおすすめです。
また、反り腰の根本改善には、硬くなった腸腰筋のストレッチや、弱くなった腹筋・お尻の筋肉のトレーニングをあわせて行うことも大切です。太もも前面だけでなく、体全体のバランスを整えていきましょう。
立って行う太もも前面(大腿四頭筋)のストレッチは、反り腰(腰椎前弯症)の人が行うと腰の反りを強めて腰を痛めやすく、注意が必要です。反り腰の人は大腿直筋・腸腰筋が硬く、骨盤が前傾しがち。安全に伸ばすには、腰が反りにくい「うつ伏せ(または横向き)」での方法を、腰を反らさず30秒キープで。ヘルニア等のある方は慎重に行い、痛みが出たら中止しましょう。
※本記事は一般的な運動情報です。腰や膝に痛みのある方、椎間板ヘルニア・腰椎すべり症・分離症・脊柱管狭窄症などの持病がある方は、自己判断でストレッチを行わず、医師や理学療法士などの専門家にご相談ください。