太りすぎてしまう原因の一つに『過食』、つまり食べ過ぎがあります。ここでいう食べ過ぎとは、単に量が多いということではなく、自分が日常生活で使うエネルギー(消費カロリー)以上に、エネルギーを摂取(摂取カロリー)してしまった状態のことを指します。病気が原因で太る場合を除けば、太る原因のほとんどは、この『エネルギー収支のアンバランス』が生み出すといってもよいでしょう。
エネルギー収支のアンバランスを不等式で表すと、『摂取カロリー > 消費カロリー』なら体重の増加、『摂取カロリー < 消費カロリー』なら体重の減少を意味します。
当然、『摂取カロリー = 消費カロリー』の関係が成り立てば、体重の増減はありません。このように、『太る』『痩せる』というメカニズムは、摂取カロリーと消費カロリーの相対的な関係で決まります(この収支をコントロールしながら行うダイエットを「カロリーダイエット」といいます)。
つまり減量とは、『摂取カロリーを減らしつつ、消費カロリーをいかに増やすか』ということに尽きます(実は、そこが一番難しいのですが…)。ただし、消費カロリーを増やすといっても、運動不足が原因で太った方は、運動能力(スタミナ)自体が低い傾向にあるため、いきなり運動でカロリーを消費するのは難しいかもしれません。ダイエットを無理なく行えるかどうかは、その人の基礎体力とも関係します。体力に自信のない方は、ダイエットの前に、まずウォーキングなど軽い運動から始めて基礎体力の向上に努めると、結果的に近道になります。
具体的な食事の減らし方ですが、急激に減らすのは禁物です。目安として、現在の摂取カロリー(例えば1日2,000kcal)から1日あたり250kcal程度を減らすと、1か月でおよそ1kgの減量が無理なくできるとされています。脂肪1kgは約7,000〜7,700kcalに相当するため、1日250kcal前後の「赤字」を積み重ねるのが、体に負担の少ない現実的なペースです。これを大きく上回るペースで減量すると、筋肉の減少や体調不良、リバウンドなど様々な問題が起こりやすいので避けましょう。
手軽に手に入る「太りにくい食事」を続けるなら、洋食よりも和食がおすすめです。主食にごはん、おかずに魚・海藻・きのこ、間食は低脂肪乳と少量の果物、といった具合です。このように、たんぱく質・炭水化物・脂質・ビタミン・ミネラルを過不足なく摂るよう心がけましょう。とくに、減量中にたんぱく質をあまり摂らない方が多いようですが、筋肉を失わないためにも、たんぱく質はしっかり摂ることが大切です。
さらに、その日に食べたものを「食事日記」に記すのも有効です。毎日の食事・献立の量、飲んだものを書き出すことで、食生活全体を客観的に見つめ直せます。減量や食事療法というと、わずらわしい『カロリー計算』が必須と思われがちですが、まずはこの程度の記録でも十分に効果があります。ぜひ実践してみてください。
以前から、肥満にはその人の性格や心理的な要素も深く影響しているといわれています。太りやすい人の食行動を観察すると、『お腹がいっぱいでも好物があれば食べる』『人が食べていると自分も食べてしまう』といった傾向が共通して見られます。こうした人は外的な刺激に反応しやすく、食べ物を前にするとつい手が伸びてしまうのです。
また近年は、ストレスの影響も指摘されています。イライラしたり嫌なことがあったりすると、手当たり次第に食べてストレスを解消してしまう、というケースです。こうした「やけ食い」が習慣になると、食事のコントロールが難しくなることがあります。
こうした人は、一度にたくさんの食べ物を口に入れ、よく噛まずに飲み込む傾向もあります。早食いやよく噛まない食べ方をすると、満腹を感じさせる『満腹中枢』が働く前にどんどん食べてしまうため、結果的に食べ過ぎて太ってしまいます。逆に、よく噛んで食べれば満腹中枢が刺激され、食欲を抑えられます。一般に、食事に20分以上かけると満腹中枢の働きが活発になるといわれています。このことから、ゆっくり食べることは、太りにくくするための手軽で効果的な方法といえるでしょう。一口30回を目安によく噛む、一口ごとに箸を置く、といった工夫がおすすめです。
一時的に体重を落とすこと自体は、わりと簡単にできます。しかし、それを維持するのはとても困難です。減らした体重がもとに戻ってしまう現象を『リバウンド』といい、これを何度も繰り返す悪循環を『ウエイトサイクリング』と呼びます。これは、肥満の改善に取り組むうえで大きな問題になります。
なぜリバウンドが起こるのでしょうか。極端な食事制限をすると、体は生命を守るために省エネモード(ホメオスタシス)になり、基礎代謝を下げてエネルギーを節約します。また、満腹感を伝えるホルモン「レプチン」の分泌も減り、満腹を感じにくくなります。この状態で減量をやめて食事を元に戻すと、消費されなかったエネルギーが脂肪としてため込まれ、以前より太りやすくなってしまうのです。
注意したいのは、体重を減らすことにこだわるあまり、「健康になる」という本来の目的を見失ってしまうことです。過激なダイエットがリバウンドを生むだけでなく、心と体のバランスを崩し、過食や極端な食事制限といった食行動の問題につながってしまうケースも少なくありません。もし、食べることや体重のことが頭から離れない、自分で食事をコントロールできないと感じる場合は、一人で抱え込まず、早めに医療機関や専門の窓口に相談してください。
繰り返しになりますが、減量とは『単に体重を減らすことではなく、脂肪量を減らし、体脂肪率(筋肉と脂肪の割合)を正常値に近づけること』です。体重計の数字だけにとらわれず、健康的に、無理なく続けられる方法を選びましょう。
太りすぎの主な原因は、摂取カロリーが消費カロリーを上回る「エネルギー収支のアンバランス」です。減量は1日250kcal減・月1kgほどの無理のないペースで、たんぱく質を確保しつつ和食中心に。よく噛んで20分以上かけて食べると満腹中枢が働き食べ過ぎ防止に。過激な減量はリバウンドや心身の不調を招くので避け、体重ではなく体脂肪を減らすことを目標にしましょう。食事や体重のことで苦しいときは専門家に相談を。
※本記事は一般的な健康・栄養情報です。持病のある方や、食事・体重のコントロールに悩んでいる方、極端な食行動に心当たりのある方は、医師や専門の相談窓口にご相談ください。