「肥満」とは、体重に対する脂肪の割合が増えすぎた状態を指す言葉で、単に体重が多い・少ないということではありません。大切なのは、体組成(筋肉と脂肪の割合)がどうなっているかなのです。
ダイエットブームが続き、専門家による様々なダイエット法が解説されているのに、いまだに「体重」で肥満を考える風潮が根強いのは、なぜでしょうか。一因として、身長から割り出した体重の割合(BMIなど)で肥満を判断すべきだという思い込みが、まだ広く残っていることが挙げられます。
体脂肪率とは、体重のうち体脂肪量が占める割合のことです。これに対し、体脂肪量を除いたもの(筋肉、骨、血液など)を除脂肪体重(LBM)といいます。
健康な体とは、筋肉と脂肪がバランスよく配分された、均整のとれた体のことです。本来、減量とは体重を減らすことではなく、脂肪を減らして体脂肪率を正常値に近づけていくことをいいます。
減量の基本は、『必要最低限の栄養を含んだ低カロリーの食事』『適度な運動』『太りやすい生活習慣の改善』によって、摂取エネルギーが消費エネルギーを下回る「エネルギー不足の状態」をつくることです。これが、脂肪を減らすための大原則です。
しかし、単に食事を減らすだけだったり、長期にわたって偏った運動(例えば有酸素運動だけ)を続けたりしていると、筋肉量が減ってしまうおそれがあるので注意が必要です。たしかに筋肉が減った分、体重は落ちます。しかし、その結果、不健康でやつれた体になったり、基礎代謝が下がって減量前より太りやすい体になったりします。こうなると、体脂肪率は体重を落とす前とほとんど変わらないか、むしろ増加傾向を示すことさえあります。そして、減らした体重が以前より増えてしまう——この現象が、いわゆるリバウンドです。だからこそ、無理なく続けられる方法を選ぶ「継続性」が、理屈の上での「合理性」以上に大切なのです。
かつての肥満判定は、先に触れたように、身長から割り出した体重が目安とされてきました(現在も広く使われるBMI=体重kg÷身長m÷身長m が代表的で、日本肥満学会ではBMI25以上を肥満としています)。しかし、この体重ベースの判定には限界があります。
例えば、筋肉を鍛え上げたボディビルダーは、BMIの計算でいうと「肥満」に分類されてしまいます。しかし、本当に肥満なのでしょうか?もちろん違います。筋肉は脂肪より重いため、体脂肪が少なくても体重(BMI)は高くなるのです。つまり、体重が多い人すべてが肥満とは限らない、ということです。
ここに、ほぼ同じ身長・体重の2人の男性がいます(図1参照)。
身長から割り出した体重は両者とも標準ですが、体脂肪率を測定すると、Aさんは『標準』、Bさんは『肥満』という結果が出ました。Bさんは、脂肪量が多い割に筋肉量などが少なすぎる状態です。このBさんのような人を「隠れ肥満」といいます。体重やBMIは標準なのに、体脂肪率が高い状態のことで、近年は運動習慣の少ない人や女性を中心に増えているといわれます。
隠れ肥満のほとんどは、運動不足とエネルギーの摂りすぎが原因です。もしBさんが肥満を解消するなら、食事を見直すだけでなく、エアロバイクなどの有酸素運動で脂肪を落としつつ、ウエイトトレーニングで筋肉や骨を充実させることが重要になります。体重計の数字だけでなく、体組成計で体脂肪率を定期的にチェックすることが、自分の本当の状態を知る第一歩です。
体脂肪率の測定が済んだら、次は減量目標を立てましょう。ここで再びBさんに登場してもらい、減量目標を計算してみます。目標体重は、除脂肪体重(LBM)と目標体脂肪率を使った次の公式で求めます。
例として、体重63.9kg・体脂肪率25.5%のBさんが、体脂肪率20%を目指す場合で計算します。
・体脂肪量:63.9kg × 25.5% = 約16.3kg
・除脂肪体重(LBM):63.9kg - 16.3kg = 約47.6kg
この計算から目標体重は約59.5kgと求められ、
減量目標 = 63.9kg - 59.5kg = 約4.4kg となります。
脂肪1kgは約7,700kcalの熱量を持つので、Bさんが4.4kgの脂肪を落とすには、計算上およそ33,880kcalのエネルギー消費(摂取の削減+消費の増加の積み重ね)が必要です。大きな数字に見えますが、1日あたり数百kcalの収支改善を続ければ、数か月で無理なく達成できるペースです。急がば回れで、月1〜2kg程度のゆるやかな減量が、筋肉を守りリバウンドを防ぐコツです。なお、これらは目安の計算であり、家庭用体脂肪計には誤差があります。体調を最優先に、極端な減量は避けましょう。
肥満とは「脂肪が過剰な状態」であり、体重ではなく体組成(体脂肪率)で判断すべきものです。BMIや体重が標準でも体脂肪率が高い「隠れ肥満」もあり、逆に筋肉が多い人はBMIが高くても肥満とは限りません。正しい減量は、体重ではなく脂肪を減らし、筋肉を守ること。有酸素運動と筋トレ、食事改善を組み合わせ、月1〜2kgのペースで無理なく続けるのが、リバウンドしない健康的なダイエットです。
※本記事は一般的な健康・栄養情報です。持病のある方や極端な食事制限・減量を検討している方は、医師・管理栄養士にご相談ください。