自分にあった枕を選び快適な睡眠を得るには?高さの測り方と選び方を解説

これといった原因が特にないのに、寝つきが悪い、『寝ているだけなのに首や肩が凝る』『疲れがなかなか取れない』——こうした眠りの悩みを抱えている方は、意外と多いものです。これらの不快な症状は様々な要因で起こりますが、とりわけ、普段使っている寝具や枕が大きく影響している場合が多いようです。そもそも、なぜ私たちは眠るときに枕を使う必要があるのでしょうか。

なくてはならない歪み?生理的弯曲(せいりてきわんきょく)とは

これを理解するには、まず人間の骨格の構造を少し知る必要があります。人間の脊柱(背骨)は、椎骨という円柱状の骨が積み重なってできており、成人の脊柱を真横から見ると、ゆるやかな4つの弯曲(カーブ)が見られます。

具体的には、頚椎は前弯(前方向に凸)、胸椎は後弯(後ろ方向に凸)、腰椎は前弯、仙椎は後弯、という具合です。この弯曲は『生理的弯曲』と呼ばれ、生きていくうえで必要な、自然なカーブです。背骨全体で見ると、ゆるやかなS字を描いています。

ただし、この弯曲は大きすぎても小さすぎてもよくありません。適度な弯曲がないと、体に大きな負担がかかってしまうからです。生理的弯曲は、日々の生活習慣の中で徐々に失われたり、逆に過剰になったりすることがあり、それが首こり・肩こり・腰痛など、様々な不快症状をもたらします。人によっては、より重い症状に悩まされることもあります。

私たちは、この生理的弯曲を、起きているときはもちろん、寝ているときもある程度保つ必要があるのです。もし睡眠時に、自分に合っていない枕を使っていると、頚椎の生理的弯曲(前弯)が保てなくなり、やがて首や肩に不快症状が現れるようになってしまいます。

なぜ、寝るときに枕をする必要があるのか?

前述のとおり、頚椎の生理的弯曲は、寝ているときにも保たれなければなりません。その弯曲を保つためのものが、普段使っている枕なのです。

つまり枕は、『頭をのせるためのもの』ではなく、『寝るときに、布団(マットレス)と頭部・頚部の間にできる隙間を埋めるためのもの』なのです。この隙間には個人差があるので、人それぞれ合う枕が違ってきます。よく『枕が替わると眠れない』といいますが、それは、その枕が自分の体格に合っていないからだと考えられます。実際、整形外科でも、枕が高すぎると首が反りすぎ、低すぎると顎が上がって首に負担がかかるとされ、「軽くあごが引けて呼吸が楽な高さ」が理想とされています。

自分にあった枕を選ぶ方法は?

自分に合った枕の高さ(頚椎弧=けいついこ)を測る手順を紹介します。なお、計測は二人一組で行います。(図参照)

  1. 測ってもらう人は、壁に背中をつけて自然にゆったりと立ちます。このとき、あごは自然に軽く引いておきます(5度くらい)。
  2. 計測者は、測ってもらう人の第7頚椎から壁までの距離を測ります(第7頚椎は、首を前に曲げたときに首の後ろに出っ張る突起です)。
  3. 測った数値に1cmを足した値が、自分に合った理想的な枕の高さの目安です。

最近では、フルオーダーやセミオーダーで、自分に合った枕を作ってくれるお店も増えてきました。一度、専門家に相談してみるのが一番確実です。

枕選びは寝相(寝姿勢)によっても変える必要がある

枕選びで重要になるのが、その人の寝方(寝相)です。例えば、腰の前弯(反り)が強い方は、一般に仰向けで寝るのが苦手な傾向があります。仰向けになると腰椎の反りがさらに強まり、そのまま寝続けると腰に過度な負担がかかって、腰を痛めることがあるからです。そのため、腰椎前弯症などで腰の反りが強い方は、横向きになって股関節と膝を曲げ、体を丸めて寝ている方が多いのです。

では、先ほど紹介した(仰向け前提の)枕の高さの測り方で、横向きで寝ることが多い方の枕の高さを正しく割り出せるでしょうか。結論をいうと、それはできません。あの方法は、仰向けで寝ることだけを想定しているからです。

枕の高さは、仰向けだけでなく、横を向いたときにも合っているかを確認する必要があります。横向きでは、肩幅の分だけ高さが必要になるため、一般に仰向けより3〜5cmほど高めが目安とされ、頭から背骨が一直線になる高さが理想です(横向きの高さは、実際に使うマットレスの上で測りましょう。肩が沈む分、床では正確に測れないためです)。また、寝返りがスムーズに打てるかも、枕選びの重要なポイントです。寝返りは、体の血流や姿勢のバランスを保つために大切な動きだからです。

枕さえ選べばよいわけではない──今使っている寝具によっても効果は半減

寝具売り場で計測してもらい、オーダーやセミオーダーの枕を作ったからといって、それですべて安心、とはいきません。なぜなら、皆さんが普段使っている敷布団やマットレスの上で枕の調整をしたわけではないので、売り場での心地よさがそのまま再現されるとは限らないからです。枕とマットレスは、いわばセットで寝姿勢を決めるものなのです。

そのため、ある程度予算に余裕のある方は、敷布団やマットレスもあわせて見直すのがおすすめです。現実的に難しい場合は、枕の下にタオルを敷くなどして、自宅の寝具に合わせて高さを微調整するとよいでしょう。

自分にあった枕を使わないことによる弊害

もし、自分に合った枕を選ばないと、どうなるのでしょうか。

高すぎる枕を使うと、頚椎が圧迫されて首筋を痛めたり、肩こりの原因になったりします。さらに、あごが引けすぎて空気の通り道である気道が狭くなるため、『いびき』をかきやすくなり、睡眠の質が低下することもあります。

反対に低すぎる枕を使うと、頭が下がって首まわりの筋肉に負担がかかり、首こりや頭痛の原因になることがあります。また、頭に血がのぼりやすくなり、寝つきが悪くなったり、疲れが取れにくくなったりすることもあるといわれます。

このように、枕選びは単に見た目で決めるのではなく、自分の首の高さ(頚椎弧)や寝相を考慮し、快適な睡眠が得られるものを選ぶことが大切です。それが、日々のストレスや体の不調を軽減する第一歩ともいえるでしょう。

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まとめ

快適な睡眠には、首の生理的弯曲(自然なS字カーブ)を寝ている間も保つことが大切です。枕は「頭をのせるもの」ではなく「布団と首の隙間を埋めるもの」。理想の高さは頚椎弧+1cmが目安ですが、横向き寝では仰向けより3〜5cm高めに。寝返りのしやすさやマットレスとの相性も重要です。高すぎる枕はいびき・肩こり、低すぎる枕は首こりの原因に。自分の首と寝相に合った枕を選びましょう。

参考文献・出典

※本記事は一般的な健康・睡眠情報です。首や肩の痛み、頭痛、いびき、睡眠の不調が続く場合は、整形外科や睡眠の専門医にご相談ください。

編集長