引き締まった腹筋を目指して毎日のように腹筋運動をしているのに、いつまでたっても効果が現れない——そんな相談が多く寄せられます。以前のかわら版でも触れたとおり、トレーニングは漠然と行っても効果は出ません。効果的に行えるかどうかは、トレーニングする人が、いかに正しい知識を身につけて実施するかにかかっています。
いつまでも効果が現れないのは、腹筋がどのような筋肉で、どうすれば鍛えられるのかを理解しないまま行っているからではないでしょうか。腹筋運動を「極める」第一歩は、正しい知識を持つことです。
腹部を引き締めるには、まず大前提として『脂肪を減らすこと』が必要です。そのために脂肪燃焼に役立つ有酸素運動(エアロビック・エクササイズ)を行うことは言うまでもありません。ここで、とても大切な事実を押さえておきましょう。「腹筋運動をすれば、お腹の脂肪だけが落ちる(部分痩せできる)」というのは誤解です。残念ながら、特定の部位だけを狙って脂肪を落とすことは生理学的にできません。お腹の脂肪を減らすには、有酸素運動と食事管理によって、体全体の体脂肪を減らしていく必要があります。
そのうえで、腹部を引き締めるためのもう一つの重要な要素が、『腹直筋(ふくちょくきん)を鍛える』ことです。お腹には、表層の腹直筋をはじめ、内腹斜筋(ないふくしゃきん)、外腹斜筋(がいふくしゃきん)、そして最深層の腹横筋(ふくおうきん)など、様々な筋肉が層になって存在します。
腹直筋は体幹を屈曲させる(前に丸める)動作に関与するほか、姿勢の維持や、お腹の中の内臓を正しい位置に保つ役割も果たしています。腹直筋や腹横筋などの腹筋群が十分に働いていないと、内臓を支えきれず、お腹がぽっこりと前に出て見えることがあります(体脂肪はさほど多くないのに下腹だけ出ている、という場合、腹圧や姿勢が関係していることがあります)。つまり、有酸素運動・食事で体脂肪を減らしつつ、腹筋群を鍛えて引き締める——この両輪が、引き締まったお腹への近道なのです。
しかし、なかなか効果が出ないという声が多いのも実情です。その主な原因の一つが、正しいフォームで腹筋運動を行っていないことにあります。本当にお腹を引き締めたいなら、腹筋の働きを正しく理解し、正しいフォームで行うことが欠かせません。
腹直筋は、胸部(肋骨)と骨盤をつなぎ、脊柱を屈曲(前屈)させる作用があります(ただし立位では、抵抗が加わらない限り、体幹を前に倒すのは主に重力の働きである点に注意が必要です)。
腹直筋が主に働くのは、体を「丸める」初期の動きの範囲です。仰向けで上体を起こしていくとき、はじめに背中が床から離れて上体を丸める局面では腹直筋がしっかり働きますが、そこからさらに肘が膝に触れるほど大きく上体を起こしていくと、腹直筋よりも他の筋肉(大腿直筋や腸腰筋など、股関節を曲げる筋肉)が主に働くようになります。つまり、上体を起こしすぎる動作は「純粋な腹筋運動」とはいえなくなるのです。
ですから、いわゆる「腹筋運動」で腹直筋を狙って鍛えたいなら、上体を起こしすぎないことがポイントです。床に寝て行う場合は、肩甲骨が床から離れる程度まで「おへそを覗き込むように」背中を丸める動き(クランチ)が効果的とされています。逆に、頭の後ろで手を組んで上体を完全に起こす「シットアップ(上体起こし)」は、腸腰筋や大腿直筋も関与するうえ、反動を使うと腰に負担がかかりやすいので、とくに腰に不安のある方はクランチを選ぶとよいでしょう。
ジムにあるアブドミナル・マシン(腹筋マシン)を使うと、安全に負荷を調整しながら腹直筋を鍛えられます。正しい使い方は次のとおりです。
※ 動作が完全に終わるまで、おもり(ウエイト)が重なって「ガチャン」と当たらないように、慎重に動作を繰り返します(負荷が抜けず、効果的かつ安全です)。
腹筋に限らず、どの筋肉のトレーニングでも、正しいフォームを身につけることが何より大切です。
あわせて、回数の目安は10〜20回を1セットとして2〜3セット程度、頻度は毎日ではなく週2〜3回が一般的です。筋肉は休息中に回復・成長するため、しっかり休むことも「腹筋運動を極める」うえで欠かせません。腹直筋だけでなく、腹斜筋(ひねる動き)や腹横筋(ドローイン=お腹をへこませる動き)もバランスよく鍛えると、より引き締まった印象になります。
現在のトレーニングの誤りを見直し、正しいフォームを身につけて実行できれば、有酸素運動・食事管理と合わせて、見事に仕上がった腹筋を作り上げるのも夢ではないでしょう。
腹筋運動を極めるには、腹筋の構造と正しいフォームの理解が欠かせません。腹直筋は体を丸める動きで働くので、上体を起こしすぎず「おへそを覗き込む」クランチが効果的。シットアップは腰に負担がかかりやすいので注意します。なお、腹筋運動だけで部分痩せはできません。お腹を引き締めるには、有酸素運動と食事管理で体脂肪を減らしつつ、腹筋群を鍛えることが大切です。
※本記事は一般的な運動情報です。腰や首に痛みのある方、持病のある方は、トレーニングを始める前に医師や専門家にご相談ください。