【Q&A】上腕二頭筋のトレーニングで筋肉痛にならない原因は?超回復から解説

Q.近頃、上腕二頭筋のトレーニングを頑張っても筋肉痛になりません。

まず大前提として、筋肉痛が出ないこと=効果がないこと、ではありません。筋肉痛の有無はトレーニング効果の正確な指標ではなく、適切な負荷をかけて扱える重量や回数が伸びていれば、筋肉痛が出なくても筋肉は成長しています。とはいえ、「以前は出ていたのに最近は出ない」という場合、いくつかの理由が考えられます。順に見ていきましょう。

キーワードになるのが「超回復」という現象です。ウエイトトレーニングによって筋肉が疲労し、一時的に筋力の水準が低下します。

しかしその後、休息を取ることで筋力の水準はもとのレベルまで徐々に回復し、最終的にはもとのレベル以上にまで高まります。これが超回復です。
文献によっても異なりますが、超回復にはおよそ48〜72時間かかるといわれています。

この48〜72時間というのはあくまで平均的な目安で、回復にかかる日数は鍛える筋肉によって異なります。一般的な目安としては、大胸筋・広背筋・大腿四頭筋などの大きな筋肉は約72時間、上腕二頭筋・上腕三頭筋・三角筋などは約48時間、腹直筋・前腕筋群・ヒラメ筋などは約24時間、脊柱起立筋は約96時間とされています。回復日数が違うのは、筋肉の大きさや性質、日常生活での使われ方が異なるためです。

そして、ここがポイントです。一般に、小さい筋肉は疲労も早い一方で回復も早く、しかも「鍛えるほど回復が速くなる」「同じ刺激に慣れていく」という性質があります。トレーニングを始めた頃は回復に時間がかかり強い筋肉痛が出ていたのに、続けるうちに体が適応し、回復が速くなって筋肉痛が出にくくなっていくのです。今の上腕二頭筋は、まさにこの「刺激に慣れた」状態になっているのではないでしょうか。

つまり、筋肉痛が出ないのは「効いていない」のではなく、多くの場合「体が今の刺激に適応した」サインです。もし、さらに高い刺激を加えて成長を促したいなら、トレーニングの種目を変える、使用重量や回数・セット数を変える、動作のテンポを変える、可動域を見直すなど、新しい刺激を与える工夫が有効です。これは上腕二頭筋に限らず、すべての筋肉に共通する考え方です。ただし、筋肉痛を「出すこと」自体を目的に無理な高重量で追い込むと、ケガのもとになるので注意しましょう。

Q.心理的限界と生理的限界ってなんですか?

生理的限界とは、人間が本来持っている筋力の限界値、いわば体が出せる力の「本当の上限」のことです。ところが私たちは、普段この力をすべて使えているわけではありません。一般の人は、最大限の力を発揮しているつもりでも、神経系のブレーキ(ケガを防ぐための防衛機構)が働くため、実際には生理的限界の6〜7割程度の力しか出せていないといわれます。この「実際に発揮できる上限」が心理的限界です。

この心理的限界は、高負荷(ヘビーウエイト)のトレーニングを継続することによって、生理的限界に近づけていくことができます。日頃から鍛えている競技者では、心理的限界が生理的限界の8〜9割にも達するといわれており、この差の小ささが、発揮できる筋力の差につながります。つまりトレーニングとは、筋肉そのものを大きくするだけでなく、「眠っている力を使えるようにする(神経系を鍛える)」プロセスでもあるのです。ただし、限界に挑む高重量トレーニングは必ず正しいフォームで、補助者や安全装置のある環境で行いましょう。

Q.運動をしないと筋肉が脂肪になると聞いたことがあるのですが?

結論から言うと、これは誤解です。筋肉と脂肪はまったく別の組織であり、筋肉が脂肪に変わったり、脂肪が筋肉に変わったりすることはありません。鉄が金に変わらないのと同じで、別の組織どうしが入れ替わることはないのです。

では、なぜ「筋肉が脂肪になった」ように見えるのでしょうか。トレーニングを継続すると筋肉は発達して大きくなり、体脂肪は減少します。逆に運動をやめると、筋肉は使われずに細くなり、消費エネルギーが減って体脂肪が増えていきます。この2つの変化が皮下で同時に起こるため、外から見ると「筋肉が脂肪に変わった」ように見えるだけなのです。実際には、細くなった筋肉と、増えた皮下脂肪が、占める場所を入れ替えたような状態になっているにすぎません。だからこそ、せっかくつけた筋肉を維持するには、運動を完全にやめてしまわず、頻度を落としてでも続けることが大切です。

Q.フルレンジ、ハーフレンジ、パーシャルレンジとは何ですか?

これらは、運動の「動作範囲(可動域)」に関する用語です。

フルレンジは、関節の可動範囲全域にわたって動作を行うことをいいます。筋肉を大きく伸ばし、大きく縮める動きで、一般的には筋肉全体をバランスよく発達させやすい基本のやり方です。ハーフレンジは、フルレンジのおよそ半分の範囲で動作を行うこと、パーシャルレンジは、可動範囲のごく一部だけで動作を繰り返すことを指します。ハーフレンジやパーシャルレンジは、動作の中で一番力が出にくい「スティッキング・ポイント」を集中的に強化したいときなどに用いられます。基本はフルレンジで丁寧に行い、停滞を感じたときの変化球としてハーフ・パーシャルを取り入れる、という使い分けがおすすめです。

Q.ストラップってどんな目的で使用するのですか?

(リフティング)ストラップとは、手首に巻いてバーやダンベルと手を固定する、紐または革製のトレーニング補助具です。

握力が弱いと、バーベルやグリップを握り続ける際に前腕の筋肉が先に疲れてしまいます。例えば、背中を鍛えるラットプルダウンを行っているのに、背中より先に前腕に効いてしまった(握力が持たなかった)という経験はありませんか。こうしたとき、ストラップを使ってバーと手首を固定すると、前腕に過度な負担をかけずに済み、握力に邪魔されることなく、狙った背中の筋肉を効率よく追い込めるようになります。デッドリフトや懸垂など、高重量を扱う引く種目で特に役立ちます。

ただし、ストラップを多用しすぎると、握力(前腕)が鍛えられないまま他の筋肉だけが強くなり、「ストラップがないとトレーニングできない」状態になりかねません。普段は自分の握力で行い、握力が先に限界を迎えてしまう高重量のときだけ補助的に使う、という使い方が良いでしょう。握力そのものも鍛えたい場合は、あえて使わない日を設けるのも一つの方法です。

まとめ

上腕二頭筋を鍛えても筋肉痛が出ないのは、多くの場合「体が今の刺激に慣れた」サインで、効果がないわけではありません(筋肉痛は効果の指標ではありません)。さらに伸ばしたいなら、種目・重量・回数・テンポなどに変化を。あわせて、回復日数は部位で異なること(上腕二頭筋は約48時間)、トレーニングは心理的限界を引き上げること、筋肉は脂肪に変わらないこと、ストラップは高重量時だけ補助的に使うことも押さえておきましょう。

参考文献・出典

※本記事は一般的なトレーニング情報です。痛みや体調不良がある場合、持病のある方は、運動前に専門家や医療機関にご相談ください。

編集長