【Q&A】胸郭を広げるトレーニングはある?やり方と注意点をわかりやすく解説

Q.胸郭を広げるトレーニングってありますか?

あります。肺の外側を囲む胸郭は、12個の胸椎・12対の肋骨・1個の胸骨から成り立っていますが、特殊なスクワットやプルオーバーといった種目で、肋骨から胸骨につながる「肋軟骨」などの結合組織を伸ばすことで、胸郭まわりの柔軟性を高め、胸の広がりをつくっていく狙いのトレーニングがあります。あわせて、胸郭の上にある大胸筋などの筋肉を発達させることで、見た目の胸囲(バスト・胸板)を大きくしていくことができます。

成長期(骨や軟骨が柔らかい時期)のほうが胸郭は変化しやすいといわれますが、大人になってからでも、根気よく続けることで胸まわりの柔軟性向上や大胸筋の発達によって胸囲を広げることは十分に可能です。

なお、「短期間で胸囲が劇的に増える」といった話を見かけることがありますが、骨格そのものが大きく変わるわけではなく、変化には個人差があり時間もかかります。過度な期待はせず、コツコツ取り組むのが現実的です。今回は、胸郭を広げる目的でよく知られる「ブレッシングスクワット」を紹介します。

■ブレッシングスクワットのやり方

  1. 用いる重量は、自分の体重以下の軽めに設定します(呼吸法を重視する種目なので、高重量は不要です)。
  2. 肩幅よりやや広めにシャフトを握り、僧帽筋の上部にバーベルをかつぎます。ラックから外し、バランスをとりながら後方へ下がります。
  3. できるだけ大きく息を吐き、できるだけ大きく吸い込む「イン・アンド・アウト呼吸」を3回行い、3回目に大きく息を吸って止め、その状態でスクワット動作に入ります。立ち上がる際、一番きつい局面(スティッキングポイント)を越えたあたりで息を吐きながら立ち上がります。この呼吸パターンを繰り返しながら、12〜15回を目安に行います(数セット行います)。

胸を大きく開いて深く呼吸することを意識するのがポイントです。ただし、息を止めて力む局面があるため、血圧が急上昇しやすい点には注意が必要です。高血圧や心疾患のある方には向きません。また、めまいを感じたら無理せず中止し、必ず軽い重量で、できれば補助者やラックの安全装置がある環境で行ってください。

Q.通信販売などで売られている、腹筋を鍛えるローラーについて教えてください。

まず、腹筋(腹直筋)の構造から説明します。腹直筋は胸骨から恥骨につながる細長い筋肉で、主な働きは体幹(胴体)の屈曲(前に曲げる動き)です。腹直筋を鍛えるには、寝た状態から「おへそをのぞき込む」ように上体を丸める動作が基本です。

ここで重要なのが、上体を起こしすぎない(両肘が両膝につくほど起こさない)ことです。深く起こす動作は、腹直筋による体幹の屈曲というより、股関節を曲げる筋肉(腸腰筋、大腿直筋、縫工筋など)の働きが主体になってしまいます。腹直筋は、寝た状態(0°)から約25°ほど上体を丸める範囲で主に働くため、肩甲骨が床から少し離れる程度で十分に効かせられるのです。

さて、本題の腹筋ローラー(アブローラー)ですが、その動作は、体幹を丸める動きというより、体を一直線に伸ばしていく際に腰(腰椎)に強い伸展負荷がかかる動きを含みます。腸腰筋の一部である大腰筋は、太ももの骨から腰椎につながっているため、伸びた姿勢で耐える局面では腰椎が引っ張られ、腰を痛めるリスクが生じます。これは、股関節を伸ばしたまま行う腹筋運動と似た負担です(「腹筋運動で腰を痛めないよう膝を曲げる」とよく言われるのは、腰椎への負担を減らすためです)。

結論として、腹筋ローラー(特に立って行う「立ちコロ」)は、腰にかなり大きなストレスがかかる上級者向けの種目です。現在または過去に腰を痛めたことがある方、トレーニングを定期的に行っていない方、高齢の方は、使用を避けた方が安全です。行う場合も、まずは膝をついて行う「膝コロ」から、体幹をしっかり締めて(腰を反らさず)、無理のない範囲で始めましょう。腰に痛みや違和感が出たらすぐに中止してください。

Q.バック・エクステンションを行っているときに、あまり反らすと良くないと聞いたのですが。

そのとおりで、反らしすぎは禁物です。背骨(脊柱)は、椎骨と呼ばれる骨が積み重なってできており、靭帯や筋肉がそれを補強しています。なかでも、椎骨の後ろ側に突き出た「棘突起(きょくとっき)」は、脊柱の安定性を保つうえで重要な役割を果たしています。

バックエクステンション(背中を反らす種目)で、過度に反らしすぎる(ハイパーエクステンション=過伸展)状態になると、後ろ側の棘突起どうしが衝突・圧迫され、椎間板の変性や、棘突起の疲労骨折などを招くことがあります。これらは、腰椎分離症やすべり症といった、強い痛みを伴う状態につながるおそれがあります。

こうしたトラブルを防ぐために、バックエクステンションでは反らしすぎないことが大切です。具体的には、体が一直線になる(あるいはそれよりわずかに上げる)程度で止め、腰を限界まで反らさないようにします。お尻と背中の筋肉を意識し、反動を使わずゆっくり動作しましょう。腰に不安のある方は、無理に反らさず、うつ伏せで手脚を軽く持ち上げる程度の優しいバリエーションから始めると安全です。

Q.ピリオダイゼーションって何ですか?

ピリオダイゼーション(ペリオダイゼーション、日本語では「期分け」)とは、一年(または一定期間)を通じて、運動の強度や量に計画的な強弱のリズムをつけてトレーニングを行う方法のことです。常に全力で続けるのではなく、時期ごとに目的を変えることで、効率よく実力を高め、オーバートレーニングやケガを防ぎます。一般的に、準備期・鍛錬期・試合期・移行期などに分けられます(専門書によって区分は多少異なります)。

① 準備期
全面的な体力の土台づくりを重視します。トレーニング強度は比較的低め、運動量は多めに設定します。自分の体力レベルを把握するため各種測定を行い、トレーニングへの理解を深めることも大切な時期です。

② 鍛錬期
トレーニング強度を高めていきます。ただし、強度を上げるにつれて運動量は減らしていくのが原則です(強度と量を反比例させる)。これを守らないとオーバーワークやケガのリスクが高まります。鍛錬期はさらに、筋肥大段階・筋力強化段階・パワー強化段階の3つに分けられます。

・筋肥大段階:重量は8〜12RM、回数8〜12回、量は多め
・筋力強化段階:重量は5〜6RM、回数5〜6回、量は中程度
・パワー強化段階:重量は2〜4RM、回数2〜4回、量は少なめ

(※高重量・低回数の段階ほどケガのリスクが高まるため、フォームの習得と十分なウォームアップが前提です)

③ 試合期
トレーニングの成果を安定して維持する時期です。技術(スキル)トレーニングを重視し、本番に向けて気持ちの面の安定・高揚を図ります。

④ 移行期
「積極的回復」を目的とする期間です。完全に運動をやめるのではなく、心身のストレスを解放できる程度の軽い負荷で体を動かし、次のシーズンに向けて調整します。

Q.EMSを使用すると筋力が高まるのですか?

人は、自分の意思で最大限の力を出そうとしても、実際には本来持っている力の70%程度しか発揮できないといわれます。この「本来の能力の上限」が生理的限界、「実際に発揮できる上限」が心理的限界です。一般の人は、最大限に力を込めているつもりでも、神経系のブレーキ(防衛機構)によって6〜7割程度に抑えられているのです。

この心理的限界と生理的限界の差は、高負荷(ヘビーウエイト)のトレーニングを継続することで縮めていくことができます。また、電気的な刺激やその他の強い外的刺激によって、この差が一時的に縮まることも知られています。いわゆる「火事場のばか力」も、危機的状況で心理的なブレーキが外れ、本来の力に近い力が出る現象です。

では、EMS(電気的筋肉刺激)で筋力は高まるのでしょうか。EMSは筋肉に刺激を与えられるため、運動不足の方やリハビリでの筋力維持・向上には一定の役割を果たします。ただし、EMSによる筋収縮は自分の意思による収縮よりも弱く、本格的に筋力・筋量を高めるには、自発的なウエイトトレーニングのほうが効果的です。EMSはあくまで補助的な手段と考え、運動やバランスの良い食事と組み合わせるのが現実的です。なお、心臓ペースメーカーなど体内に医療機器のある方や妊娠中の方は、使用前に必ず医師に相談してください。

まとめ

胸郭を広げるには、軽い重量で深い呼吸を意識する「ブレッシングスクワット」などが知られています。短期間で劇的に、とはいきませんが、根気よく続ければ胸まわりの柔軟性向上と大胸筋の発達で胸囲を広げられます。あわせて、腹筋ローラーやバックエクステンションは腰への負担に注意(腰に不安のある方・初心者・高齢者は慎重に)、ピリオダイゼーションは時期で強度と量を変える計画法、EMSは補助的手段であることも押さえておきましょう。

参考文献・出典

※本記事は一般的なトレーニング情報です。腰痛などの持病がある方、高血圧・心疾患のある方、体内に医療機器のある方は、運動の前に医師や専門家にご相談ください。

編集長