目次
結論からいうと、もも裏(ハムストリングス)を鍛えるのは、シュート力アップにとても理にかなっています。ただし「もも裏だけ鍛えればいい」わけではなく、なぜもも裏が重要なのかを理解すると、より効果的にトレーニングできます。
まず、シュートの動作(体幹・下肢に限ってみると)では、主に大腿四頭筋(とくに大腿直筋)、内転筋群、腸腰筋、前脛骨筋、腹直筋、腹斜筋群などが使われます。ですから基本的には、これらの「ボールを蹴る側で主に働く筋肉」を鍛えるのが土台になります。
しかし、これらの動きを円滑に行うためには、反対の働きをする拮抗筋(きっこうきん)、つまりハムストリングスの柔軟性と筋力を養うことが欠かせません。ここがシュート力を伸ばす鍵になります。
① 柔軟性
ハムストリングス(太ももの裏側)が硬いと、いくら股関節を曲げる筋肉が強くても、脚を高く振り上げてボールを遠くへ蹴る動作ができません。ハムストリングスは大腿二頭筋・半腱様筋・半膜様筋から成りますが、このうちどれか一つでも硬いと、それが脚を振り上げる動作の制限因子になります。そのため、ハムストリングス全体の柔軟性を高めておくことが大切です。
② 筋力
ボールを蹴る前には、必ず脚を後方へ素早く引く「バックスイング」を行います。この動作を力強く行うためにも、ハムストリングスの強化が必要です。さらに、脚を素早く後方へ引いて切り返すことで、SSC(ストレッチ・ショートニング・サイクル=伸張-短縮サイクル)が働きます。これは、筋肉を一度伸ばしてから一気に縮めることで、ゴムのように大きな力を生み出す仕組みで、ジャンプ前にしゃがむと高く跳べるのと同じ原理です。蹴る前のバックスイングでハムストリングスが伸ばされ、その反動で爆発的にボールを蹴り出せるのです。また、蹴り脚を振り抜いたあとには、ハムストリングスが振りすぎを抑える「ブレーキ筋」としても働くため、この点でも強化が重要です。加えて、軸足側のハムストリングスや臀部も、体を支えるために強く働いています。
③ 筋バランス
太ももの前(大腿四頭筋)が強く、裏(ハムストリングス)が弱いと、前後の筋バランスが崩れ、膝関節が不安定になったり、腰痛や肉離れが起こりやすくなったりします。結果として、せっかくの前ももの力も最大限に発揮できなくなってしまいます。一般に、よく運動しているスポーツ選手でさえハムストリングスは弱くなりがちなので、「もも裏を鍛えよう」と言われるのは、この筋バランスを整える意味でも理にかなっているのです。なお、ハムストリングスは肉離れの多い部位でもあるため、強化と柔軟性の両方をバランスよく行い、運動前後のウォームアップ・ストレッチを忘れないようにしましょう。
肩をよく使うスポーツでは、大きく分けてインナーマッスルとアウターマッスルの両方を鍛える必要があります。
インナーマッスルとは、肩関節の深層にある筋肉のことです。肩のインナーマッスルはローテーターカフ(回旋筋腱板)と呼ばれ、肩甲下筋・棘上筋・棘下筋・小円筋から成ります。ローテーターカフは、上腕骨の骨頭を関節の中で安定させ、肩の回旋運動を担う重要な筋肉群です。野球のピッチャーのように投球・投擲動作を繰り返す選手は、肩の障害(けが)を防ぐためにも、日頃からこのローテーターカフを強化しておく必要があります。
主なインナーマッスルは、肩甲下筋・棘上筋・棘下筋・小円筋です。
一方、アウターマッスルは表層にある筋肉で、一般に「肩の力強さ」というとこの筋肉を指します。肩関節周辺のアウターマッスルには三角筋・僧帽筋などがあります。ただし、本当の意味での「肩の強さ」とは、単に筋力が強いことだけでなく、肩を繰り返し使っても故障しない(けがをしにくい)ことを意味します。だからこそ、力強いアウターマッスルと、関節を安定させるインナーマッスルの両方をバランスよく鍛えることが大切です。
これらを鍛える代表的なエクササイズには、スタンディングプレス、ショルダーシュラッグ、アップライトローイング、インターナルローテーション(内旋)、エクスターナルローテーション(外旋)などがあります。インナーマッスルのトレーニングは、軽いダンベルやチューブで丁寧に行うのがポイントです。すでに肩に痛みがある場合は無理をせず、整形外科やスポーツトレーナーに相談してください。
スクワットでしゃがむとき、大腿直筋(太もも前の筋肉)はエキセントリック・アクティビティ(伸張性収縮)という活動様式になります。つまり、筋肉が伸ばされながらも力を発揮している状態です。
「しゃがむとき、大腿直筋は一方で伸ばされ、他方で縮んでいて、差し引きゼロでは?」と思うかもしれません。ゴムの片側を固定してもう一方を引っ張れば伸び、固定側を近づければ元に戻る、というイメージですね。しかし、大腿直筋の伸張・収縮はそんな単純な計算にはなりません。大腿直筋は股関節と膝関節をまたぐ「二関節筋」で、スクワットでしゃがむと、股関節側では縮む方向に働いても、膝関節側では強く引き伸ばされているのです(差し引きゼロにはなりません)。もっとも、股関節が伸びて膝が曲がった姿勢ほどには、引き伸ばされてはいません。
そもそもスクワット動作だけでは、大腿直筋を最大に収縮させることも、最大に伸張させることもできません。ちなみに、大腿四頭筋を伸ばした状態で収縮させる種目がシシースクワット、縮めた状態で収縮させる種目がレッグエクステンションなどです。なお、レッグエクステンションのレップ数が増えて苦しくなると、背もたれから上体を離して反動気味に続ける人がいますが、これは上体を前に出すことで股関節の屈曲が強まり、二関節筋である大腿直筋がより働こうとするためです。ただし、こうした代償動作は対象筋から負荷を逃がしフォームを崩すので、基本は正しい姿勢で行いましょう。
O脚(内反膝)とは、両足のくるぶしをそろえて立ったときに、左右の膝の内側がつかず、脚がアルファベットの「O」の字のように外側へ開いて見える状態のことです。程度の差はあれ見られる人は多いとされますが、「日本人の大半がO脚」といった俗説もあるものの、その割合を正確に示す確かなデータは乏しく、見え方には姿勢や脂肪・筋肉のつき方も影響します。
O脚は見た目の問題だけでなく、程度が強い場合には膝の内側に負担が偏りやすく、長期的には変形性膝関節症などにつながる可能性も指摘されています。一方で、よく言われる「O脚が婦人科系の病気を引き起こす」といった説には明確な医学的根拠はなく、過度に不安をあおる情報には注意が必要です。むくみや姿勢の崩れなどは、O脚そのものというより、生活習慣や筋力低下と関連していることが多いと考えられます。
O脚は、生まれつきの骨格や成長によるもの(先天的・構造的なもの)と、姿勢や歩き方の癖・筋力低下によるもの(後天的・機能的なもの)に大きく分けられます。骨の変形を伴う構造的なO脚は自己流の改善が難しい一方、筋肉や姿勢の癖による機能的なO脚は、トレーニングや姿勢改善で見た目が和らぐことがあります。簡単なセルフチェックとして、仰向けで両かかとをつけ、膝を手で軽く閉じてみて、膝がつくようなら機能的な要素が大きいと考えられます。
機能的なO脚の改善には、膝を閉じる方向に働く内転筋群(大内転筋、長内転筋・短内転筋、恥骨筋、薄筋など)や、股関節まわりを安定させる筋肉(中殿筋や大腿筋膜張筋など)をバランスよく鍛えることが役立つとされます。アダクター(内転)・アブダクター(外転)マシンなどでの筋力トレーニングや、股関節のストレッチが一例です。ただし、O脚の原因や程度は人によってさまざまで、骨の変形が関係する場合もあるため、痛みがある・左右差が強い・気になる場合は、自己判断せず整形外科で一度相談することをおすすめします。
脈拍数だけ見ると有酸素運動の範囲に入っていますが、結論からいうと、腹筋運動や背筋運動は有酸素運動にはなりません。
ある運動が有酸素運動と呼ばれるためには、「大きい筋肉を使う」「リズミカルである」「継続的である(ある程度の時間、休まず続けられる)」という3つの条件を満たす必要があります。腹筋・背筋運動は、このうち「継続的であること」という条件を満たせません。腹筋や背筋を、休みなく20分以上も続けることは現実的に不可能だからです(数十回で限界がきて止まってしまいます)。
つまり、腹筋・背筋運動は、筋肉に短時間で強い負荷をかける無酸素運動(筋トレ)に分類されます。脈拍が120〜140まで上がっていても、それは短時間の高負荷によるもので、有酸素運動として脂肪燃焼や全身持久力の向上を狙うものとは性質が異なります。脂肪燃焼や持久力アップを目的とするなら、ウォーキング・ジョギング・サイクリング・水泳など、大きな筋肉をリズミカルに長時間使える運動を選びましょう。もちろん、腹筋・背筋運動は体幹を鍛える筋トレとして有益なので、有酸素運動と組み合わせて行うのが理想です。
サッカーのシュート力アップに、もも裏(ハムストリングス)強化は有効です。柔軟性で脚を高く振り上げ、筋力とSSC(伸張-短縮サイクル)で爆発的に蹴り出し、前後の筋バランスでケガを防ぎ前ももの力を引き出します。あわせて、肩を使う競技はインナー(ローテーターカフ)とアウターの両方を、スクワットでは大腿直筋が伸張性収縮で働くこと、O脚は機能的なら筋トレで和らぐこと、腹筋・背筋は有酸素運動にはならないことも押さえておきましょう。
※本記事は一般的な健康・運動情報です。肩・膝・脚などに痛みや左右差・変形が気になる場合は、自己判断せず整形外科など医療機関にご相談ください。