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『スティック(stick)』とは、日本語で『立ち往生する・引っかかる』という意味です。スティッキング・ポイントとは、ウエイトトレーニングの一連の動作の中で、最も力が出しにくく、バーベルが止まりやすい(立ち往生しやすい)ポイントのことを指します。
例えば、ベンチプレスというエクササイズでは、肘関節の角度が90°になったあたりでバーベルが立ち往生しやすくなります。
なぜこうなるかというと、筋肉が発揮できる力は、その筋肉の長さ(関節の角度)によって変化するからです。
筋肉には、最も大きな力を発揮できる長さと、力を出しにくい長さがあります。さらに、関節の角度によって「てこ」としての効率も変わります。これらの要因が重なり、可動域の途中に、ほかより筋出力が弱くなる「スティッキング・ポイント」が生まれるのです。多くの場合、この一番弱いポイントで挙上が止まってしまい、それ以上挙げられなくなります。停滞期(プラトー)の原因が、このスティッキング・ポイントにあることも少なくありません。
スティッキング・ポイントを打破するには、その弱点を集中的に強化する方法が有効です。代表的なのは次の2つです。一つは、スティッキング・ポイントの高さでバーを固定し、その位置で力を出し続けるアイソメトリック・トレーニング(等尺性収縮)。もう一つは、スティッキング・ポイントを中心に±10cm程度の狭い範囲だけを繰り返す部分反復(パーシャルレップ)です。このほか、その局面で働く筋肉を補助種目で鍛える方法も効果的です。なお、肩や肘に不安がある場合は、関節角度が深くなりすぎないよう、スミスマシンや軌道の決まったマシンを活用すると、負担を抑えながら弱点を強化できます。無理な高重量で関節を痛めないよう注意しましょう。
プログラムの作り方は、運動能力や目的によってかなり変わってきますが、初心者の方はまず、プログラムの中に抗重力筋(こうじゅうりょくきん)を鍛える種目を入れることをおすすめします。
抗重力筋とは、私たちが重力に逆らって直立姿勢を保つときに働く筋肉のことです。具体的には、脊柱起立筋(背中)、腹直筋(お腹)、大臀筋(お尻)、大腿四頭筋(太もも前)、下腿三頭筋(ふくらはぎ)などが該当します。これらは姿勢を支える土台となる筋肉です。
「二の腕を引き締めたい」「腕を太くしたい」という方は多いのですが、まずは抗重力筋を十分に鍛えることが大切です。なぜなら、腕の力が多少弱くても日常生活に大きな支障はありませんが、抗重力筋が弱ると、姿勢が崩れ、肩こり・頭痛・腰痛・膝の痛みなど、さまざまな不調につながりやすくなるからです。土台となる大きな筋肉を先に鍛えることは、基礎代謝の向上や、その後の腕などのトレーニング効率アップにもつながります。こうした理由から、腕よりもまず抗重力筋から鍛えるようにしましょう。スクワットやデッドリフト、プランクなどが代表的な種目です。
一般に、超回復を合理的に得るためには、筋肉が完全にオールアウト(疲労困憊)した日から48〜72時間の休息が必要だと言われています。しかし、これはかなりおおざっぱな目安です。実は筋肉は、その部位によって大きさや使用頻度が異なり、回復にかかる時間にも違いがあります。そのため、部位ごとのおおよその回復日数を把握しておくと、効率よくトレーニングを組めます。
回復日数を考慮してトレーニングを行うと、とても効果的です。(表参照)一般に、大きい筋肉ほど回復に時間がかかり、小さい筋肉は比較的早く回復する傾向があります。
ただし、回復にかかる時間は、年齢・睡眠・栄養状態・トレーニング強度・個人差によっても変わります。表はあくまで目安として使い、疲労が抜けていない・力が入らないと感じるときは、無理せず休養日を延ばすことも大切です。
ウエイトトレーニングには『超回復』という考え方があります。これは、『トレーニングを行うと疲労が起こって筋肉の能力が一時的に落ちるが、その後の休養の間に、元の水準あるいはそれ以上にまで回復する』というものです。この回復のタイミングに合わせて次の刺激を与えることで、筋肉は少しずつ強く・大きくなっていきます。
毎日同じ部位を鍛えるのは、かえって逆効果になりかねません。回復が間に合わないうちに刺激を重ねると、筋肉が十分に回復・成長できず、トレーニング効果が頭打ちになったり、オーバートレーニングで調子を崩したりすることがあるからです。「たくさんやるほど良い」というわけではなく、適切な休養とセットで初めて効果が出ます。
前述のとおり、超回復には48〜72時間の休息が目安とされるため、同じ部位のトレーニングは週2〜3回が一つの目安になります。例えば、月曜にトレーニングしたら次は木曜か金曜、というように中2〜3日空けるイメージです。毎日トレーニングしたい場合は、「今日は胸、明日は脚」というように部位を分けて鍛える(分割法)と、各部位に休息を与えながら毎日運動できます。なお、初心者のうちは少ない回数・セット数でも十分に体は変わるので、焦らず継続することを優先しましょう。
トレーニングに最適な時間帯について、アメリカの運動生理学者ウェストコットは、その著書の中で『トレーニングをする時間帯は、基本的には個人の好みの問題である』と述べています。つまり、絶対的に「この時間がベスト」というものはなく、自分のライフスタイルの中で最もトレーニングしやすい時間帯を見つけ、その時間を規則的にトレーニングに割り当てるのが良い、ということです。継続しやすさこそが、結果を左右する一番のポイントだからです。
ただし、避けたほうがよいタイミングはあります。食事をとった直後は、消化に血液が使われるため運動すると気分が悪くなりやすく、逆に強い空腹のまま運動すると、エネルギー不足でふらつきや力が入りにくくなることがあります。そのため、食事の前後どちらも極端なタイミングは避け、食後2〜3時間ほどあけるか、空腹時は軽く補食してから行うのがおすすめです。また、起床直後は体が目覚めておらずケガをしやすいので、しっかりウォーミングアップを行いましょう。就寝直前の激しい運動は、交感神経が高ぶって寝つきを悪くすることがあるため避けると無難です。
スティッキング・ポイントとは、動作の中で最も力が出しにくくバーが止まりやすいポイントのこと。筋肉の長さや関節角度で生じ、アイソメトリックや部分反復、補助種目で弱点を鍛えると突破しやすくなります。あわせて、初心者はまず抗重力筋から鍛えること、超回復には48〜72時間(週2〜3回が目安)が必要なこと、トレーニング時間帯は続けやすさ優先でよいことも押さえておきましょう。痛みがあるときは無理をしないことが大切です。
※本記事は一般的なトレーニング情報です。痛みや体調不良がある場合、持病のある方は、運動前に専門家や医療機関にご相談ください。