【Q&A】背中のトレーニングで腕に刺激が逃げる原因と対処法|効かせるコツを解説

Q.背中のトレーニングを行うと背中ではなく腕の方に刺激が逃げてしまいます。

背中のトレーニングで腕にばかり効いてしまう――これは初心者に非常に多い悩みです。背中の筋肉は自分の目で見えないため、意識して使うのが難しく、ある程度の経験が必要になります。

まず根本的な対処として、フォームの意識を変えてみましょう。ラットプルダウンやローイングなどの「引く」種目では、「手・腕でバーを引く」のではなく、「肩甲骨を寄せて、肘を後ろに引く」イメージで動作すると、腕への負担が減り、背中(広背筋や僧帽筋)に効かせやすくなります。腕はあくまで「フック(引っかけるだけ)」と考え、動作の主役を背中にするのがポイントです。また、腕を伸ばし切らず、収縮の手前で折り返して背中の緊張を保つことも有効です。重量を上げすぎると腕や反動に頼りやすくなるため、効かせられる重量まで落とすことも大切です。

そのうえで初心者の方には『マニュアルコンタクト』という方法も有効です。
マニュアルコンタクトとは、主動筋が収縮する際に第三者がその筋肉に触れる方法です。
これにより意識しにくい筋肉を意識でき、結果的に主動筋の出力を高めることができます。

コンタクトの方法には『さする』『たたく』『もむ』『つまむ』など色々ありますが、一般には『たたく』という手法を用いることが多いようです。種目によっては一人でもできますが(ダンベルアームカールなど)、背中のトレーニングは自分では触れにくいため、誰かに行ってもらうと良いでしょう。これは、鍛えている筋肉を意識する「マインドマッスルコネクション」を高める練習にもなります。

ただし、一つ注意点があります。鍛えている部位を「常に」触れ続けるのではなく、筋肉が収縮しているときだけ触れることです。これを誤ると、効果的に行えないばかりか、かえって力が入りにくくなってしまいます。慣れてくれば、触れなくても背中の筋肉が働いている感覚をつかめるようになります。鏡で肩甲骨の動きを確認しながら行うのもおすすめです。

Q.筋肉のつき方に左右差があるのですが大丈夫でしょうか?

結論からいうと、多少の左右差はそれほど気にする必要はありません。そもそも人間の体は、完全な左右対称ではないからです。内臓は元々非対称ですし、その上にある筋肉や骨格・皮膚も、見かけ上は正中線に対して左右対称ですが、厳密には差があります。

生まれて間もない頃はほぼ左右対称(シンメトリー)ですが、その後の行動パターンによって少しずつ非対称になっていきます。日常生活で利き手・利き足をよく使う、片側だけで物を噛む、といったことでシンメトリーは崩れていきます。スポーツをしている方なら、その崩れはさらに大きくなるでしょう。これはある意味、状況に応じた身体の『適応』ともいえますが、ズレが極端になると、かえってケガをしやすくなることもあります。

トレーニングのやり方でも左右差は生まれます。例えばトライセプスプッシュダウンを逆手(アンダーグリップ)で握って行うと、同じ上腕三頭筋でも内側頭への刺激が強まり、その部分が発達しやすくなります。左右で握り方や効かせ方が違えば、差はさらに広がります。とはいえ、多少の左右差なら心配いりません。気になる場合は、ダンベルなど左右を独立して鍛えられる種目を取り入れ、弱い側に合わせて回数や重量をそろえると、徐々に整えやすくなります。なお、モデルやボディビルの世界ではシンメトリー(左右対称)が美しさの評価として重視されます。

Q.ここ最近、腕やお腹のトレーニングをしても筋肉痛を感じなくなってしまいました。

ひとつの可能性として、今のトレーニング方法では、上腕三頭筋や腹直筋に十分な刺激を与えられなくなっているのかもしれません。(ただし、前提として、筋肉痛の有無はトレーニング効果の正確な指標ではありません。筋肉痛がなくても、扱える重量や回数が伸びていれば効果は出ています)刺激が頭打ちになっていると感じる場合は、トレーニング種目・強度・方法に変化を加えてみてください。

例えば、コンパウンドセット法を試すのも一つの方法です。コンパウンドセットとは、同じ筋群を動員する種目を休みなく連続して行う方法です(例:上腕二頭筋のバーベルカールとハンマーカールを連続して行う)。ただし、こうした方法を試す前に、まず以下の基本ができているか確認してみてください。

① 扱うウエイトは適切か(軽すぎ・重すぎないか)
② フルストレッチ・フルコントラクション(全可動域で動かす)を心がけているか
③ セット間のインターバルは適切か
④ チーティング(反動)を多用していないか
⑤ トレーニング動作のスピードは適切か

多くの方を見てきた経験では、「効果が出ない」という方の多くが①〜⑤、特に③④⑤ができていない傾向にあります。③腕や腹部の筋肉は、大きな筋群に比べてインターバル(休息)を短めに設定する方が効きやすくなります。④チーティングを多用すると、筋肉に十分な刺激を与えられません。⑤動作が速すぎる(スピードリフト)と、対象の筋肉に刺激が入りにくくなります。

また、知らず知らずのうちに腕でテコを作ってしまっている方も多いようです。例えばプリチャーカールで肩をすくめて(カールベンチと脇の間に隙間ができて)行うと、テコの原理で高重量は挙がりますが、上腕二頭筋への負荷は逃げてしまいます。脇をパッドに密着させ、対象の筋肉から負荷を逃さないことが大切です。

Q.リフティングベルトをあまり使いすぎてはいけないといわれたのですが….

リフティングベルトは、もともと腹圧(お腹の中の圧力)を高める助けとなり、腰部をケガから守るためのものです。ベントオーバーローイング、デッドリフト、ミリタリープレスなど腰部に負担のかかりやすい種目で用いられます。

ただし、多用しすぎると、腹部や背部といった体幹の筋肉が十分に養われないまま、上半身・下半身の筋力だけが強くなってしまうことがあります。ここでいう「多用」とは、トレーニング中、終始ベルトを着けたままにすることを指します。体幹は本来、自前の腹圧でも体を支える力を持っているので、それを育てる機会を奪わないことが大切です。

そのため、高重量を扱うときや腰に不安があるときはベルトを活用し、軽度〜中等度の重量では極力ベルトを外してトレーニングする、というように使い分けるのがおすすめです。なお、すでに腰に痛みがある場合は無理をせず、必要に応じてベルトを使い、症状が続くようなら医療機関に相談してください。

Q.シャープで発達したふくらはぎの筋肉を付けたいのですが….

俗にふくらはぎと呼ばれる部分には、下腿三頭筋という筋肉があります。下腿三頭筋は強大な筋肉で、浅層の腓腹筋と、深層にある平たいヒラメ筋から成り立っています。効果的に鍛えるには、まず筋線維のタイプを理解しておくと役立ちます。

筋線維には大きく分けて、ST線維(遅筋・赤筋)、FT線維(速筋・白筋)、その中間的な性質を持つFOG線維の3種類があります。ST線維(遅筋)は、収縮は遅く力も小さいものの、長く持続できる持久的な性質を持ちます。FT線維(速筋)はその逆で、収縮が速く大きな力を出せますが、持続時間は短いという瞬発的な性質を持ちます。これらが筋肉の中にちりばめられていますが、その割合は筋肉の部位によっても、人によっても異なります。

ここで知っておきたいのが、筋線維タイプの割合には遺伝的な個人差があるということです。速筋の割合が多い人もいれば、遅筋の割合が多い人もいて、これはある程度生まれつき決まっているとされます。そのため、同じトレーニングをしても、筋肉のつきやすさには個人差があります。これは人種というより「個人の体質」の問題で、誰であっても自分の持つ素質の範囲で、トレーニングによって着実に筋肉を発達させることは可能です。理想の形に「少しでも近づけていく」ことは十分にできます。

具体的な鍛え分けですが、ふくらはぎのうち浅層の腓腹筋は速筋線維が比較的多く、深層のヒラメ筋は遅筋線維が比較的多いといわれています。つまり、どちらを狙うかで鍛え方が変わってきます。

腓腹筋(速筋寄り)を鍛えるなら、高重量・低回数が向いています。速筋線維は肥大しやすく、効率よく肥大させるには、ある程度高い負荷(目安として最大筋力の75%以上)を用いると良いとされます。種目としては、立った姿勢で行うスタンディングカーフレイズやドンキーカーフレイズが効果的です。

ヒラメ筋(遅筋寄り)を鍛えるなら、低〜中重量・高回数が向いています。膝を曲げた座位で行うシーテッドカーフレイズが効果的です(膝を曲げると腓腹筋の関与が減り、ヒラメ筋を狙いやすくなります)。両方をバランスよく鍛えることで、ふくらはぎ全体を引き締めていけます。

まとめ

背中のトレーニングで腕に刺激が逃げるのは、背中を意識して使えていないことが主な原因です。「肩甲骨を寄せ、肘で引く」意識と、マニュアルコンタクトやマインドマッスルコネクションの練習で改善できます。あわせて、左右差は多少なら問題ないこと、筋肉痛は効果の指標ではないこと、リフティングベルトは使い分けること、ふくらはぎは腓腹筋とヒラメ筋で鍛え分けることも押さえておきましょう。痛みがあるときは無理をせず専門家に相談を。

参考文献・出典

※本記事は一般的なトレーニング情報です。痛みや体調不良がある場合、持病のある方は、運動前に専門家や医療機関にご相談ください。

編集長