フィットネスかわら版

漸進性の原則

ただ漠然とトレーニングを行っていても、なかなか、運動の効果は上がらないものです。
それを効果的に行えるか否かは、トレーニングを実施する人が『いかに正しい知識を身に付け、実施するか』にかかっています。
そのためにはトレーニング理論(原理・原則)の理解を深める必要があります。
トレーニング理論はたくさんありますが、なかでも『漸進性の原則』(ぜんしんせいのげんそく)は特に重要です。

トレーニングを始めたばかりのころは適切な運動負荷であってもトレーニングを継続するにしたがって、徐々にその負荷は楽にこなせるようになり、次第にその運動負荷は体力を向上させるための適切な負荷ではなくなってきます。したがってこのようなときは、負荷を段階的に増やさなければ体力の向上はあり得ません。このように『負荷を段階的に増やし、次第にその負荷を強めていく』ことを『漸進性の原則』といいます。
しかし、それ以前に自分の体力レベルをしっかりと見極め、自分にあった負荷を選ぶ必要があります。
もし、見極めず適当に行ったとすると、大きな事故につながることもあります。

Aさんを襲った悲劇

過去にこんな事故がありました。
これはアメリカで実際に起こった出来事です。
Aさん(64歳のお婆さん)は1m64cmという身長にかかわらず体重が154kgもありました。
当然ここまで体重が重いと自力で動くことすら困難で、寝るときでさえも普通の形では眠れずベッドに傾斜をつけるというありさまでした。
あまりにもひどすぎるということで病院に入院し、医師、管理栄養士らのもとで食事療法を中心に行うことになりました。
そのかいあってAさんは半年足らずで114kgまで体重を落とすことができたのです。
ちょうどそのころイースターパレードが病院から100mばかり離れた通りを通るということなので、Aさんは『ぜひ、自分の目で見に行ってみたい』と担当医に申し出ました。
さすがに40kgも体重が減っただけに心電図・血液検査・血圧も以前よりはるかによくなっていたので、担当医は『看護婦と同伴だったら見に行っていい』という許可を与えました。
喜んだAさんは看護婦に手を引かれてパレードを見に行くことになりました。
当日、Aさんはパレードを心行くまで堪能し、その日の夕方には付き添いの看護婦とともに病院に戻りました。
ところが、その日の晩に事態は一転、Aさんは『心室細動』を起こして帰らぬ人になってしまったのです。
なぜ、このようなことが起こってしまったのでしょうか?
それは、往復200mの距離がAさんにとって運動量・強度ともに高すぎたのです。
思い出してみてください。『Aさんは体重が重すぎて自力で動くことすら困難だった』ということを。
後日の事故報告書によるとAさんは自分の足で歩いたのが実に20年ぶりとのことでした。
入院して以来、医師・管理栄養士らのもとで、食事療法を続け、データーが全てそろっているにも関わらず200m歩いて死ぬかどうかの診断ができなかったわけです。
医学的検査・メディカルチェックをやりさえすれば運動によって起きる障害を予防できると思ったら大間違いです。
メディカルチェックを行うということは、運動するにあたっての『必要条件』にしかすぎません。
ですから、メディカルチェックの結果、異常なしといわれたら、次に考えなければならないのは『漸進性の原則』です。

昔は昔、今は今…

中高年に限らず、一般的なスポーツを含むトレーニングを行っていないと、各体力要素は確実に低下の一途をたどります。
日常の身体活動量は職種によっても異なりますが、トレーニングなしには全身持久力の改善はおろか維持すらも望むことはできません。
昔どれだけやっていようといまいと、止めてしまえば体力というのは確実に消失していくものと理解しなければなりません。
このように、徐々に体力が消失していくことを『可逆』といいますが、ほとんど全ての体力はこの『可逆』です。
今までろくに歩いたことのない人が一念発起して急に運動を始めるほど怖いものはありません。
急激な運動というのは単に運動強度の強弱ではなく、生活の急激な変化を指します。
『昔とった杵柄』という言葉がありますが、昔、運動を本格的に行っていたという人ほど無理をする傾向にあります。
『若い頃はこれだけできた』からといって、無理をすると先の事故のようなことになるかもしれません。
『昔は昔、今は今』しっかりと現状を見つめ直さないと、もしかしたらあなたが第二のAさんになるかもしれません。

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当サイトの編集長の佐藤です。
フィットネスクラブ、体育施設、大学などでトレーナーとして18年間活動してましたが、約8年前に現在の会社に就職し、現在は都内にある接骨院でカイロプラクターとして働いています。
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