運動中の正しい水分補給の仕方|量・タイミングと熱中症対策を解説

水分は、私たちの身体を構成する成分の中で最も多く、成人では身体の約60%を占めるといわれています。水分には数多くの役割があり、生きていくうえで酸素に次いで重要なものとされています。

一般に、体重の3%以上に相当する水分(汗)が身体から失われると、とても危険な状態になるといわれています。よく知られているのが脱水症状ですが、このとき心臓にも大きな負担がかかります。

汗をかきすぎて体内の水分が失われると、血液の粘性(粘り)が高まってしまいます。運動を行うには、より多くの酸素を筋肉や各器官に送り届ける必要がありますが、ドロドロした粘性の高い血液では十分に酸素を運べず、『需要に対して供給が追いつかない』状態、いわゆる『血液循環障害』を引き起こしてしまいます。

さらに、体内の水分が失われると、消化吸収能力の低下や体温調節機能の低下が起こり、熱痙攣(ねつけいれん)・熱疲労・熱中症(熱射病・日射病)など、様々な障害を引き起こす原因にもなります。脱水は、運動のパフォーマンスを落とすだけでなく、命に関わる熱中症にもつながるため、正しい水分補給がとても重要なのです。実際、体重の2%の脱水で持久力が低下し、3%以上で運動能力が大きく落ちるとされています。

「水を飲んでも太る体質」って本当にあるの?

前述のとおり、水分は身体の約60%を占めますが、体内の水分量は男性より女性の方が少ないといわれます。これは、ちょうど水と油の関係を思い浮かべると分かりやすいかもしれません。一般に女性は男性より体脂肪率が高く、脂肪は水分をあまり含まないため、相対的に体内の水分量が少なくなるのです(成人男性で約60%、女性で約55%とされます)。この、脂肪と水分(除脂肪量)で電気の通りやすさが異なる性質を利用したのが、体脂肪計でおなじみの『インピーダンス法』です。

よく『私は水を飲んでも太る』という言葉を耳にしますが、これは生理学的にはあり得ません。水が脂肪に変わることは絶対にないからです(水にはカロリーがありません)。ただし、普段から塩分の多い食事をとり、水分を多くとっていると、体内の塩分濃度を一定に保とうとする働き(浸透圧の影響)で、細胞が水分を取り込みすぎてむくむ(浮腫)ことはあります。これは脂肪が増えた「肥満」とは別物です。

もし、むくんだ状態が長く続くようであれば、腎臓などの機能が低下している可能性もあります。その場合は一度、医療機関で検査を受けることをおすすめします。

一度の運動で体重が減ったのは脂肪が減ったから?

「運動したら体重が減った=脂肪が減った」と誤解している方も少なくないので、ここは正しく理解しておきましょう。

例えば30分のジョギングを行うと、20代の平均的な男性で約300kcal、女性で約250kcal程度のエネルギーを消費するといわれます。仮にこのエネルギーをすべて糖質でまかなうと男性で約75g・女性で約60g、すべて脂質でまかなうと男性で約35g・女性で約30g程度に相当します。実際には糖質と脂質が混ざってエネルギーとして使われるため、正味、男性で約35〜75g、女性で約30〜60g相当を消費した計算になります。

この程度の脂肪の減少量を、普通の体重計で測り取ることができるでしょうか。答えは「できない」です。つまり、一度の運動で体重が減ったのは、脂肪が燃えたからではなく、主に汗として体内の水分が減っただけと理解すべきです。だからこそ、運動後は失った水分をきちんと補給することが大切なのです。脂肪を減らすには、運動と食事管理を継続することが必要です。

運動中の正しい水分補給の仕方

運動中の正しい水分補給の仕方

それでは、運動中はどのように水分を補給すればよいのでしょうか。ポイントを整理します。

1. のどが渇く「前」に、こまめに飲む
一度に大量の水分をとると、腹痛を起こしたり、吸収しきれなかったりすることがあるので、何回かに分けて飲むのが基本です。一度に大量に飲んでしまう原因の多くは、『のどの渇きを我慢しすぎること』にあります。人ののどの渇きの感覚は意外と鈍く、「のどが渇いた」と感じたときには、すでに安全な発汗量を超えてしまっている可能性が高いのです。そのため、のどの渇きを感じる前から、計画的に補給することが大切です。目安は、1回100〜150ml程度を、10〜15分間隔(15〜20分ごとに150〜250ml程度とする目安もあります)で。運動前にも200〜500ml程度を飲んでおくとよいでしょう。冷たすぎない、適度に冷えた飲み物(15℃前後)は吸収がよく、体温の上昇も抑えてくれます。

2. 長時間・高強度の運動では「塩分」も補給する
1時間以内の運動であれば、基本的に水で十分です。しかし、1時間を超える長時間の運動や、汗を大量にかく高強度・暑い環境での運動では、発汗で失われるミネラル(とくに塩分=ナトリウム)を考慮する必要があります。汗には約0.3%の塩分が含まれており、水だけを大量に飲むと体内の塩分濃度が薄まって、かえって脱水(自発的脱水)や、頭痛・吐き気・けいれんなどを招くことがあります。これを防ぐため、日本スポーツ協会は、塩分0.1〜0.2%+糖質を含む飲料(スポーツドリンクなど)を推奨しています。エネルギー補給を兼ねるなら糖質4〜8%程度が目安です。ただし、塩分のとりすぎは高血圧などにつながるため、汗をあまりかかない軽い運動のときは水で十分です。また、カフェインを含む飲み物(コーヒー・緑茶など)は利尿作用があるため、運動時の水分補給には向きません。

なお、長時間イスに座る場面などでむくみ・血流が気になるときは、足首を上下に動かす「ジグリング」も役立ちます。

最後に、もし運動中・運動後に、めまい・吐き気・頭痛・筋肉のけいれん・大量の発汗や逆に汗が止まる・意識がもうろうとするなどの症状が出たら、熱中症のおそれがあります。すぐに涼しい場所で休み、水分・塩分を補給してください。意識がはっきりしない・水分を受け付けないなどの場合は、ためらわず救急要請(119番)を。とくに高齢の方や子どもは熱中症になりやすいので、周囲の見守りも大切です。

まとめ

運動中の水分補給は「のどが渇く前に、こまめに」が基本。1回100〜150ml程度を10〜15分間隔で、運動前にも飲んでおきましょう。1時間以内の運動は水でOKですが、長時間・高強度・暑い環境では塩分(0.1〜0.2%)+糖質入りのスポーツドリンクが安心です。一度の運動で減る体重は主に水分で、脂肪ではありません。脱水は熱中症につながるため、異変を感じたら涼しい場所で休み、重い場合は救急要請を。

参考文献・出典

※本記事は一般的な健康・運動情報です。心臓・腎臓などに持病のある方、水分・塩分の摂取制限を受けている方は、必ず医師の指示に従ってください。熱中症が疑われ、意識がはっきりしない場合などはただちに救急要請してください。

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