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危険が伴うストレッチ-腰背部編-
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不良姿勢の一つである腰椎前湾症(腰の反りが強くなってしまった状態のこと)になってしまってる方の多くは腰部の筋肉が著しく固くなってしまってることが多いようです。
そこで腰部の筋肉をストレッチしようとしてしばしば用いられるのが下記の写真のようなストレッチです。
これはヨガでいう『鋤(スキ)のポーズ』と呼ばれるエクササイズです。
このストレッチは腰背部を中心とした複合ストレッチなのですが、運動実施時に頚椎に負担が掛かりすぎるエクササイズとして、近年ではあまり実施されることが少なくなりました。
頚椎と胸椎・腰椎の構造的な違い
写真を見ても何となくお解かりいただけると思いますが、『鋤(スキ)のポーズ』は頚椎への負担が著しく掛かります。
頚椎は胸椎や腰椎と同様に椎骨が連なった構造をなし、それを靭帯が支えることで脊柱を形づくっています。
そして、取り巻きの筋肉が働くことで脊柱を動かすことができるのです。(靭帯のフォローも行っています)
しかし、頚椎には胸椎や腰椎とは異なる特有の特徴があります。
下図のように頚椎は七つの椎骨と呼ばれる立方骨(りっぽうこつ)で構成されています。
そのうちの上から一、二番目にある第一頚椎(環椎)、第二頚椎(軸椎)は他の椎骨とはかなり異なる特徴を持っています。
第二頚椎(軸椎)の歯突起が第一頚椎(環椎)椎孔にはまりこんだような形状をしているため、回旋動作がしやすいという構造をしているのですが、反面、屈曲-伸展という動作には極めて不利な構造をしているのです。
胸椎が回旋しにくいのは肋骨が胸椎の回旋の動きを妨げるからです。
また、腰椎は胸椎に比べると回旋しやすいのですが、頚椎ほどではありません。
腰椎が回旋するのは椎間板上で椎体がずれるからであって、特殊な形状をしている頚椎に比べるとやはり回旋動作には限界があります。
鋤(スキ)のポーズがもたらす様々な弊害
上記で述べたように第一、第二頚椎は回旋という動きには優位な構造をしているのですが、反面、屈曲-伸展という動作には極めて不利な構造をしています。
そのため『鋤の(スキ)のポーズ』という頚椎の過屈曲動作が起きてしまうようなエクササイズは極めて危険であると言えます。
何故なら、指一本ほどの太さしかない軸椎に体重の重みがかかってしまうのですから、どれだけ危険な動作なのかは容易に想像ができると思います。
その他に頚椎を深く曲げることで頚部の動脈を押しつぶす恐れもあります。
頚椎の動脈が頭蓋骨の中に入る際、環椎の椎骨動脈溝や横突孔を通過するので頚椎を過度に屈曲させるとで頚部の動脈が押しつぶされるので頭部へ血液が流れにくくなってしまいます。
仮に頚動脈が圧迫されなかったとしても『鋤(スキ)のポーズ』を行うことで重力の関係で物凄い量の血液が頭蓋骨内に流れ込むので、人によっては気持ち悪くなってしまうこともあります。
特に動脈硬化や動脈瘤のある方では勢いよく血液が流れすぎてしまうので動脈が破裂する恐れもあります。
それでは『鋤のポーズ』用いずに安全で効果的に腰背部のストレッチを行う方法はあるのでしょうか?
腰背部の安全なストレッチ
それではここで比較的安全に行える腰背部のストレッチを二つほどご紹介します。
▪️ダルマストレッチ
このストレッチは俗に『ダルマストレッチ』と呼ばれるストレッチです。
身体を丸めることで腰背部のストレッチになるのですが、効果的に行うためにはなるべく腹筋に力を入れるようにしてください。
こうすることで相反性抑制(そうはんせいよくせい)が起こり、安全にそして効果的に腰背部の筋肉を伸ばすことができるからです。
▪️実施方法
- フロアで仰向けになり両膝を両手で包み込みます。
- 両手で両膝を胸に引き寄せます。このとき、更にアゴを引き、肩背部を床面から浮かせて行うことにより首から肩、背中のストレッチにもなります。
- 腰背部、臀部、大腿部後面にストレッチ感を得たらその状態を20~30秒維持させます。
- 以後、必要に応じ、3~4セット繰り返します。
▪️バランスボールを利用した下背部のスタティックストレッチ
次にご紹介するストレッチはバランスボールの球面を利用して行うストレッチです。
ストレッチを行う際には自重(自分の身体の重み)を利用するので、安全にそして効果的に腰背部の筋肉を伸ばすことができるエクササイズと言えます。
▪️実施方法
- バランスボールの上にうつ伏せに寝ます。バランスボールの上でバランスが上手く保てるように両手足を大きく広げておきます。
- 上肢の腕の重み、下肢の足の重みを利用して腰背部を伸ばします。このとき身体はボールの球面にあずけるように行います。
- 腰背部にストレッチ感を得たらその状態を20~30秒維持させます。
- 以後、必要に応じ、3~4セット繰り返します。
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