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- 様々な肩関節のトラブルとその症状-肩関節周囲炎-
これまで『手を真横に挙げる動作』『結帯動作(帯を結ぶような動作)』『結髪動作(髪を結ぶような動作)』などの動きで肩先に強い痛みが出る症状のことを『四十肩・五十肩』と呼んでいました。
しかし、今日では原因がはっきりした疾患はそれぞれ、『インピンジメント症候群』『石灰沈着性腱炎』『腱板断裂』『上腕二頭筋長頭腱断裂』などと呼ばれ、原因がはっきりしない疾患を『四十肩、五十肩』と呼びます。
以下に肩関節によく見られる症状をご紹介したいと思います。
様々な肩関節のトラブル
▪️ 四十肩・五十肩
上記でご紹介したとおり、四十肩、五十肩は痛みの原因が未だに解明されておらず、病態についてもはっきり解明されていません。
諸説ありますが、外傷や血流障害をきっかけに『老化を基盤とした関節包の軽度の炎症が自己免疫反応を引き起こして発症する』というのが今現在、一番有力な説のようです。
四十肩、五十肩は疫学的には全人口の5%が罹患(りかん)すると言われており、男性より女性の方が発症率が高いといわれています。
発症は利き手の反対側に生じることが多く、両肩同時に発症するケースは極めてまれです。
また、発症し四十肩・五十肩の痛みが落ち着いた頃に逆側の肩が痛くなる確率は30~40%もあると言われています。(勿論、痛めた肩がまた再び痛くなることもあります。)
▪️ インピンジメント症候群
いわゆる肩関節は上腕骨と肩甲骨とで構成されています。
上腕骨の骨頭と呼ばれる部分が肩甲骨の関節窩(かんせつか)と呼ばれる溝(みぞ)にはまりこみ肩関節を構成しているのです。
しかし、肩甲骨の関節窩は同じ構造を持つ股関節に比べ、非常に浅く、動きに対する制限が少ない反面、不安定で脱臼を始め様々なトラブルが生じやすい場所と知られています。
これらの筋肉群が弱くなると肩関節の安定性が保てなくなってしまうので、上腕骨の骨頭部分が上方向にずれます。
この結果、棘上筋の腱が上腕骨と肩甲骨の肩峰の間にはさまってしまい、摩擦が生じて炎症を引き起こします。
この障害を『インピンジメント症候群』と呼びます。
インピンジメントは日本語では『衝突』『激突』などと訳されています。
▪️ 石灰沈着性腱炎
一般に石灰沈着性腱炎(せっかいちんちゃくせいけんえん)は40~50歳代の女性に多くみられます。
肩腱板内に沈着したリン酸カルシウム結晶によって急性の炎症が生じる事によって起こる肩の疼痛です。
石灰は、当初は濃厚なミルク状なのですが時間が経つにつれ肩関節付近で石膏(せっこう)状へと硬く変化していきます。
この石灰がどんどんたまって膨らんでくると、可動域の制限が生じるだけでなく、痛みが増し、肩関節を動かすことが出来なくなります。
石灰沈着性腱炎と先に紹介したインピンジメント症候群の判別は困難ですが、レントゲンを撮ればどちらなのかがはっきりします。(※石灰沈着性腱炎の場合は発生場所がレントゲンに白く写ります。)
▪️ 回旋筋腱板断裂
回旋筋腱板は『ローテーター・カフ』ともいい、棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋の総称です。
回旋筋腱板の断裂は肩関節を強打することにより発症してしまうこともありますが、そのほとんどが先にご紹介した『インピンジメント症候群』がきっかけになってしまうことが多いようです。
インピンジメント症候群が悪化することで、やがて棘上筋の腱に亀裂が生じ、最終的に腱板が断裂してしまうのです。
▪️ 上腕二頭筋長頭腱炎
上腕ニ頭筋長頭腱炎の主な原因は、加齢による筋力低下、運動前のストレッチ不足、そして筋肉の酷使が原因となることが多いようです。
好発年齢は、30才から50才代の男性に多い傾向にあります。
間違ったウエイトトレーニングの方法を行ったことで長頭腱炎が発症することもあります。
特に『インクライン・ダンベルカール』『バーベルベンチプレス』 などの種目で痛めやすく、インクラインカールを行うときにインクラインベンチの角度を低くくしすぎたり、バーバルベンチプレスを行うときに肩甲骨の寄せ(肩甲骨の内転)が甘かったりすると長頭そのものに負荷がかかり腱が切れてしまうことがあります。
このように上腕二頭筋の長頭腱が切れてしまうことを『上腕二頭筋長頭腱断裂』といいます。
症状は腕を挙上するときの運動痛と上腕二頭筋の長頭腱が走行している結節間溝部の圧痛が特徴なのですが、肩の痛みと勘違いしてしまう方も多いようです。
肩関節にトラブルが出てしまった場合の対応法
四十肩、インピンジメント症候群、石灰沈着性腱炎であれ、肩の痛みの急性期には炎症が伴うので基本的にはRICE処置を試みます。(※炎症の五大徴候は機能障害、熱感、腫脹、発赤、疼痛です)
RICE処置とはREST(安静)、ICING(冷却)、COMPRESSION(圧迫)、ELEVATION(拳上)の頭文字をとったものです。
急性期が収まったら徐々にコッドマン(またはアイロン)体操と呼ばれる運動を用いてリハビリを行う必要があります。(具体的な方法については別ページにてご紹介したいと思います)
この時期に気を付けなければならないのは『無暗に動かさない』ことです。
特に下の写真のような肩をグリグリ動かす動作は禁忌です。
先にも述べたとおり肩関節周囲炎は棘上筋腱が肩峰と上腕骨の骨頭部分で挟まったことで発症することが多いので写真のような動作を行うことは傷口に塩を塗るようなものです。
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